29.お前はいつも ページ29
「お待たせ」
鈴の音の様に透き通った声がして、ちらりと視線だけを動かす。
「今日は実弥と合同任務なのね」と口にする彼女に「行くぞ」と一言だけ呟いて歩き始める。
「久しぶりに一緒の任務なのに、冷たくない?」
何処かムスッとした声に「あ?」と声を漏らす。
「この前の柱合会議で会っただろォ」
「怒ってるの?」
琴音からの質問にピタリと、歩みが止まる。
怒ってる、………か。
あァ、そうだな。
「鬼を許せねェと恨んでいた筈のお前が、鬼の肩を持ったんだァ。たった一日の出来事で心変わりしたお前が俺には分からねェよ」
低い声を放ってまた歩き出す。
すると後ろから「別に、心変わりしたわけじゃないわ」と声がした。
「前にも言ったように、鬼は許せない。でも炭治郎くんの家族を大切に思う気持ちも分かるから。私にはAが全てなの」
「…お前はいつもAだなァ」
「えぇ」
いつの間にか隣をならんで歩く琴音。
ちらりと彼女を見る。
何度見ても、噂に違わず美しい容姿をしている。
“女神”なんて誰が最初に言ったのかは知らねェが、その言葉がぴったりなほど強く優しい彼女。
姿勢を伸ばして、一束にまとめられた綺麗な黒髪を揺らして歩いている。
華奢なその体で鬼を刈る彼女は、一体どれ程の物を一人で抱え込んでいるのかと想像すると、モヤモヤした。
「それがお前の意思だから、否定はしねェ。けどよ…………」
そこまで言って、琴音を見ると目が合う。
「たまには自分も大事にしろ。……………持たねぇぞ」
月明かりに照らされた彼女の目が大きく揺れた気がした。
「いつも思うけれど、…実弥って見かけに依らず優しいよね」
「あ?」
ンだよ、急に………
「私のこと、怒ってたはずなのに、心配してくれるんだもの」
ふふふっと笑う姿から顔を逸らす。
「…そんなんじゃねェよ」
「あら?照れたの?」
そう言って顔を覗き込んでくる琴音。
「違ェよ」と良いかけた時、辺りから漂う雰囲気が一気に変わる。
気配を探っていると彼女が口を開く。
「近いわね」
「あァ、行くぞ」
その言葉を合図に俺たちは駆け出した。
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月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時