11.鬼とは ページ11
「鬼は人だったんだから。俺と同じ人間だったんだから。足を退けてください」
呼吸を乱しながら炭治郎くんがずっと義勇に話しかけている。
それでも義勇は動かない。
「醜い化け物なんかじゃない。鬼は虚しい生き物だ。悲しい生き物だ」
じっと義勇が炭治郎くんを見つめている。
ふと、炭治郎くんが抱えている女の子に視線が振られたのを私は見逃さなかった。
「お前は……」と呟いた義勇。
「ねぇ、お二人とも?そろそろ私に説明してくれますか?この子のこと」
私がすっと女の子を指差すと、炭治郎くんが分かりやすく狼狽えた。
「…あれは───」
口を開きかけた義勇だったけれど、ばっと顔があげられる。
私も義勇とほぼ同時に気が付いた。
でも、炭治郎くんたちを庇うことが出来ない私は「伏せて」と短く告げて彼の頭を地面に押さえつけたあと、サッと飛び退いた。
炭治郎くんと女の子を庇うように彼らの前に足を踏み出して跨いだ義勇。
ガッキィンと刀と刀が激しくぶつかった音がする。
「あら?どうして邪魔をするんです?冨岡さん」
飛び込んできた彼女がザッと地面に着地した。
「『鬼とは仲良く出来ない』って言っていたくせに。何なんでしょうか。そんなだからみんなに嫌われるんですよ」
「…。」
体勢を立て直したしのぶちゃんが私を見る。
「琴音さんもどういうおつもりですか?」
「どうもこうも、私にも事情が分からないから、まずは話を聞いてからと思っただけよ」
「庇うのですか?」
「話を聞いてから判断しても遅くはないでしょう?」
これ以上、私に言っても無駄だと諦めたのか、しのぶちゃんが刀をすっと抜いて刃先を義勇に真っ直ぐ向ける。
「さぁ冨岡さん退いてくださいね」
「俺は嫌われてない」
「「…!」」
「あ…」と声が漏れる。
その場にいた義勇意外の人間が固まった。
「あぁそれ…すみません。嫌われている自覚が無かったんですね。余計なことを言って申し訳ないです」
今度は義勇が固まる番だった。
何を思っているのか、こちらからは読み取れないけれど、恐らく落ち込んでいる。
ごめんねしのぶちゃん。
ついさっきここへ来る前に私、貴女の真似して同じ事を言っちゃったの。
ここまで落ち込んでいるのは私のせいだわと、私まで少し落ち込む。
それにしても、しのぶちゃんは相変わらずね。
そんなんじゃ彼には伝わらない。
お節介にもそんな事を思ってしまう。
いけない、私ったらどっちの見方なんだか…
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月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時