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204 ( side Atae. ) ページ29

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『與さーん、七瀬さーん、戻れますかー？』



タイミング悪くスタッフの声が俺の言葉を遮る。


あの日から、Aと話せてない。
次の日、いつもと変わりないライブ中のAの対応に、昨日あったことは夢なんやないかと思った。

でも、ライブが終わると、気まずそうに俺の元から逃げるようににっしーの元に走るAがいて、


( いつもやったら、一番に話しかけてくれんのに、)


いつもは気にならないにっしーにさえ、
どこか嫉妬心を覚えてしまう、



「日高とは、ちゃんと話せたらしいよ」

そう言って来たにっしーに、
俺はなんも言えへんかった。

話せた？
付き合ったってこと？

そんなことも思ったけど、
雰囲気的にそんな言い方やなくて、
次の日の演出では、" ふり "に変わっとった。



泣いて、部屋を出ていくAを
追いかけることはあっても、
あんな顔で、見られたのは
初めてやった。

ひどく傷ついた顔で、震えて泣いてるのは
何年も前に見た顔やった、


あぁ、俺がそんな顔させたんやなって後悔した、
自分の言葉に、行動に、


なにもわかってない、
いつも近くにいたはずやのに、

Aのこと、なにもわかってあげられてなかった。



それから、何度やって話しかけようとしても
タイミングが合わず、
ライブ中の態度で、
何にもなかったかのように振る舞うAに甘えては、錯覚して
終わった後に、話せないこの気持ちは
やっぱり、どうにかしたくて、


Aと話す日高を目の前にすると、
好きなんやないの、と思いさえする。

そんなことも思ってもないのに、
あのひどく傷ついた顔を思い出しては、
自分の言葉に後悔して、話しかけられない、

Aに、否定されることが怖い。
もういいよ、と困った顔で飽きられるのが怖くて、

いつやってAに対して、臆病すぎる。




「…、ごめん」


スタッフに呼ばれると
俺の方を少し見て、俯いてはそう言ってスタジオに戻っていくA。


自分の情けなさに手を握る、


與「…情けな、」


ため息が出て、
いつもやったら、強引にでもその腕をとって
腕の中に抱きしめて、

そんなこともできるのに。


今は、Aにこれ以上嫌われるのが怖くて、


嫌われる、



そうやな、そんなことしたんやから
仕方ないんやろうけど、


もう一度、あの笑顔で

「真司郎、」


そう名前を呼んでほしいのは、
わがままやな、A。



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