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「よし、これで大丈夫なはず、」
会場まで戻ってくるのは、
不安と、想いと、たくさんな感情が混ざって
仕方なかった。
けれど、西島くんの存在が、
私の、不安も想いも、包んでくれて、
私たちは、会場へと戻ってきた。
西「は?これから?」
「うん、…明日のリハには間に合わせたいし、まだ調整もできてないから、これから時間をかけるから、」
西「…1人で?」
「先輩もいるよ。」
西「ならいいか、…あとで顔出す。」
「ダメです。ちゃんと寝て、あと、…浦田さんもきっと心配してるから。」
西「今その話は関係ないだろ。俺は、っ、」
少し目を見開いた西島くん。
浦田さんの名前を出すと、いつもこの表情をするから。
普段感情を露わにしてこういうことを言わない西島くんの、
私しか知らない表情。
人差し指で、唇を塞ぐ。
驚いた表情に変わった西島くんは、
次の瞬間、困ったように、呆れたような表情に変わった。
西「頑固。」
「人のこと言える?」
西「なんも知らないくせに。」
「そうだなぁ、…結構ヤキモチ妬きなことはことは知ってるかな。」
西「タチ悪。」
「あと、怒ってると単語ばかりになるのも知ってる」
西「…、本当に、何もないね。」
「ないよ。また明日、ちゃんとステージの上で西島くんと、…ううん、みんながちゃんと立てるために時間を使うだけ。」
西「わかった、」
じゃあ、となるべく人目につかないところで西島くんを下ろして、
私は車を停めに駐車場へと向かった。
* * *
「これで、大丈夫なはず、」
『テールカット、やっぱ可愛いね。』
「はい、…裏地に使った色、気に入ってくださるといいんですけど、」
『Aちゃんが選んだ色だから、きっと大丈夫よ。明日、ちゃんと理央さんに話そうね。』
「…そうですね、」
飾られている、テールカットのドレス。
急遽変更したスカート部分に選んだ色は、
彼女によく合う空色だった。
それに合わせた靴も、きっと彼女の肌の色に映えて綺麗なはずだから。
『うわ、…もうこんな時間、急いで戻ろ、』
「すみません、こんな時間まで付き合わせてしまって、」
『…謝らないの。明日、いいものにしようね。』
ぱちん、と電気が消える。
明日の風景を、思い描いて、
→
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ゆう - すごく良かったです! (2020年2月4日 12時) (レス) id: 740b20218b (このIDを非表示/違反報告)
くま - 次が気になる〜!! (2019年9月3日 23時) (レス) id: dcfe0f3089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rio | 作成日時:2019年5月21日 2時