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その後、無事作詞も終えて、
レコーディングにバタバタと入る。


イベント自体まで時間はない、
ライブだって、リハだって予定はずらせない。
そう思うと、なぜだか心が焦る。


まとまるものを見て、
一回通しで聴いても、なんだか納得がいかない。



順調だと思っていたものが途端に止まる。






『Aちゃん、調子悪いなら一旦休憩いれようか。』

「すみません、」

『いいよいいよ、焦りもあるだろうから一回落ち着かせてから入ろう』

「はい、」




レコーディングスタジオを出る、
身体が重い。



既存曲4曲、新しくアルバムに入れる曲が2曲。
自分で書いたものがそのうちの1曲。


既存曲はすでに声を取ってるものを入れるから
レコーディングするものは新曲の2曲。


いいものが作れたはずなのに、
声色が乗らない。
いつもはこんな気持ちにならないのに、
デモで聞いたときはよかったはずなのに。



「なんでなんだろう、」





既存曲は、幸せなハッピーソングが多かった。
特に、だっちゃんに書いてもらったデビューソング。
それとともに出た両面ソングの片方も
ポップなものだったし、
2ndシングルはダンスナンバーだったけど、
カバーソングはラブソングだった。


作詞した新曲は、真新しくバラードでと決めていたから切ないものになった。



今の心境に、少し沿ったもの。



だからなのだろうか、
歌うたび、歌ったものを聞くたび、


心の奥が重かなる感覚がする。






あくまで実体験ではないものを歌ってるはずなのに、
私の気持ちはこうじゃないのに、






ー さよならと、言える強さも欲しかった ー




私が選んだものではない、
そんな気持ちを歌ったはずだったのに。





「さよなら、って言える強さ、」






顔を振って意識を閉ざす。
考えてはいけないことばかり考えてしまうのは、
うまくいってない時の癖だ。


本心ではないから。





「 Aさん？」




閉ざした意識の中、
少し遠くの方から声がして思わず顔を上げる。



「颯、…どうしたの」

和「ちょっと別のスタジオに用事があって。」

「そっか、びっくりした。」

和「1人ですか？」

「うん、颯は？1人？」

和「こっちはみんないますよ。2人はレコーディングですけど。」

「あ、…そっか、」

和「なんかありました？」




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