＊ 短編集 III

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世間は甘い雰囲気に包まれる二月半ば。


街は甘い匂いと、ピンクや赤といった
かわいらしい色が連なるショーウィンドウ。


バレンタインだ。



この仕事でも切っても切れない甘い雰囲気に、
男性スタッフや、男性メンバーも
うんざり…




秀「うわー、まじ？くれんの？」

日「いくつになってもやっぱり嬉しいもんだな」



してるはずなく。
この時期になると男性陣はそわそわだ。

やっぱ義理とわかってても
もらえるのは嬉しいもんだろ、と日高くんは一言。



まぁそんな私も何だかんだ、
仕事で詰まってても、いつもお世話になってるからと時間を作って、みんなに作ってしまうんだけど。



浦「毎年Aちゃんのはハズレないもんね」

「いやー、手の込んだものじゃないんですけどね、」



AAAスタッフになって何回めかのバレンタイン、
最初は渡していいもんかわからなかったけど、
とりあえず一括でと作ったクッキーがわりと好評で、
毎年ちょっとだけアレンジしながら
スタッフ用と、メンバー用で分けて持ってくるようになった。


メンバーへはちゃんと小分けにして。


もちろん実彩子の分もある。



ただ一つ、今年は持ってきてない人のもあって。



與「ん？」

「あ、…大丈夫です、それは與くんの。」

與「そしたら足りんやん。」

『…あれ、にっしーのは？』

「ないから大丈夫です。」



今日はソロの打ち合わせで後から合流するの西島くんの分はない。

みんなが不思議そうにこちらに目線を向けてくる、
ここにいるメンバーは私が西島くんと付き合ってることを知ってるから尚更だ。



宇「え、…な、なんかあった？」

「へ？なんもないよ、…いらないって言われたから、持ってこなかっただけ」

宇「は？にっしーがAからのいらないって言ったの？」

「う、うん…だから、みんなのだけ」

與「…冗談ちゃうんそれ、本気にしたんか」

「だ、だって、みんなと同じのならいらない。っていうから…」



そういえば実彩子も與くんも、あぁ、と苦笑い。
私はわからなかったけど、二人とも目を合わせて困ったように笑っていた。



宇「とりあえずにっしーにバレる前にしまっといてねー」

『にっしーに自慢しよ。』

與「あほ、やめとけ。」



みんなはそれぞれ鞄にしまい始めていて、
打ち合わせの時間まで、それぞれのことをしながら過ごしていた。



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