二 ページ2
「A。聴いてるかい?」
「…、あっごめんなさい、何の話でしたっけ」
「まッたく、ぼうっとして。もッと警戒心を持てって云ってるだろ」
「ごめん、なさい与謝野せんせ…」
呆れたような顔付きで、与謝野先生は手際良く私の腕に包帯を巻いていく。床には古い包帯が幾重にも重なり、其らは薄らと黄ばんでいたり、黒ずんでいたりして、あまり綺麗とは言い難いものであった。丁度とり替え時だった。
まあ、何時ものことだかんね、と笑う先生。私は何だか申し訳なくて、ただはにかむことしかできなかった。
きっと、先生を知る人物なら誰だって疑問を抱く筈だ。如何して『あの』与謝野晶子が、何故異能を使った治療をしないのかと。其の理由は些か単純である。
―――此れは探偵社からの、
私に対する戒めだからだ。
「全く、気を付けなね?アンタの“無痛”の異能はある意味厄介なんだから」
「…はい」
「A、アンタは何時も返事だけが立派なンだ」
そう云って先生は私の頭を撫でた。私は顔を上げず、ただ自分の固く握られた拳を見て、新しくて、真っ白な包帯を眺めた。
緊張感と優しさの、アルコール消毒の匂いがした。
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蓮ノ花 - 江羅古九さん、感想ありがとうございます!^_^はい、絵は自分で描きました!女の子の描き方ーみたいな本読みまくって描いた成果が出てたら良いんですけど笑笑 (2019年5月4日 21時) (レス) id: d96b011022 (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 文章の感じもそうですけど、絵が凄く上手いですね!!ご自分で書かれているんですか!? (2019年5月4日 21時) (レス) id: 651ad92b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮ノ花 | 作成日時:2019年4月14日 2時