NO9 ●ケーキ ページ10
ーキィィ・・・ー
扉の開く音がする。
「イルミさん！おかえりなさい！」
「・・・。」
「お仕事、お疲れ様でした！あの、お腹すいてませんか？まだ残ってた木の実でケーキ作ったんです。もし良かったら…」
赤い木の実が鮮やかに飾られているケーキがテーブルに置かれていた。
「何これ？」
「ケーキです！ゴトーさんからイルミさんが甘いものがお好きだと聞いて…私の持ってた木の実、青かったやつが真っ赤になってちょうど食べ頃になっていたので材料をゴトーさんにいただいて、キッチンで作らせてもらったんです。」
「どこでどうやって？他のやつに会った？」
「？ゴトーさんが執事専用の屋敷に連れて行ってくれました！キッチンを使っていない時間帯に入れてくださって、他の方には誰にもお会いしなかったですよ！」
「(ゴトー、気づいてるな)」
両親には自分から話すと伝えていたイルミだが、まだ何も話していなかった。そもそも家族にアーニャのことを話す気なんてさらさらなかったことをゴトーは見抜いていたのだ。
「あの、一応味見はしていて…お腹いっぱいでしたらまた明日にでも…」
Aの話が終わる前に切られていたケーキを持ち上げ口に運ぶ。
(食べてくれた・・・！)
(ど、どうかな…)
「悪くないね。」
「！！良かった〜」
満面の笑みでイルミを見上げる。
「作れるんだ。」
「はい！なんとなく作り方覚えていて！良かったぁ」
あっという間に一切れ食べ終え、2切れ目に手を伸ばす。
「今日、ゴトーさんに傷の具合を診ていただいたんですが、頭の傷も完治していて！骨の方も明日には完治するだろうとのことだったんです！なので、明日にでも街に行こうと思います！」
「…明日？」
「はい！いつまでもお世話になるわけにはいかないので…街に行って働ける場所を探そうと思います！見つかったら、必ずお礼をしにきます！」
「ふーん。そう。」
2切れ目を食べ終えるとこちらに向かって歩いてくる。
「オレ、明日も仕事だから。」
「はい！頑張ってください！」
そう言うと部屋の1番奥にある浴室に入っていった。
(結構あっさりしてたな。ケーキ食べてくれて良かった…)
浴室から出てくるとすでに寝ている彼女の元へ真っ直ぐ向かう。
(こんな何の力もない奴が街で1人で生きていく？すぐに死にそう。まぁ死んだところでオレには関係ないけど。)
(ゾルディックに害がない事が分かったからもう用はない。こいつがどこに行こうとオレには関係ない。)
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
