NO8 ●回復 ページ9
「スー…スー…」
ソファから起き上がり、ゆっくりとベッドに近づいていく。
眠っているAの顔を覗くイルミ。
(やっと寝た。)
「お父さん・・・」
寝ながらAが呟いた。
(・・・父親はいるんだ。Aって何歳？ミルキよりは上かな？妹がいたらこんな感じなんだろうか)
(ま、弟だけで充分だけど。)
翌朝、目を覚ますとテーブルに腰かけマグカップを片手に優雅に座っている彼の姿があった。
「おはようございます！早いですね！」
「オレ、この後仕事だから。何かあったらこれでゴトーを呼んで。ゴトーに連れられない限り絶対にこの部屋からは出るな。」
そう伝えると執事専用で使っている携帯をテーブルに置いた。
「はい！あの…イルミさん、一つだけいいですか…」
「何？」
「ノートとペンか何か書くものだけ用意してもらえませんか…」
「・・・」
何に使うんだ、そう思いながらも無言で引き出しに入っていた手帳とペンを持ってくる。
「ありがとうございます！！」
満面の笑みを浮かべるA。
(こんな物だけでなんでそんなに笑えるんだろう。)
イルミの部屋に来てから2週間が経った。
(もう骨もくっついた気がする！！ゆっくり休めたおかげで治りが早い！良かった！)
「A様、怪我の経過は良好です。頭の傷も完全に塞がっております。恐らく骨の方も明日には完治しているかと。」
「ありがとうございます！皆さんが親切にしてくださったおかげです！本当にありがとう！」
「とても複雑な骨折だったのでもう少しかかると思っていました。正直驚いております。普通の方なら2ヶ月はかかりそうな状態でしたので。
何か秘訣でもあるのでしょうか？」
さりげなく、いや、隠すことなく聞いてくるゴトー。
「私、記憶がなくて…何も覚えていないんです。ただ、森での生活は楽しくて！
前も森で過ごしていた気がします！自然に囲まれて生きてたのかなぁ⁈それで治りも早いのかもしれないです！」
「左様でございますか。自然溢れた環境で過ごしてこられたとのこと。
大変素晴らしいことです。貴方を見ていたらとても素晴らしい環境だったことがよく分かります。A様の記憶が一刻も早く戻るよう願っております。」
わずかに口角をあげ、微笑む。
「ゴトーさん・・・！ありがとうございます…」
「それでは、失礼致します」
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
