NO6 ●執事 ページ7
コンコン
ドアをノックする音が聞こえる。
「入っていいよ」
「失礼します…イルミ様、御用でしょうか？」
背の高い眼鏡をかけた男性が入ってきた。
「ゴトー、こいつの傷が治るまで目の届く範囲に匿うことにしたから。オレがいない時は逃げ出さないよう見張りをよろしく。
父さんや母さんには俺から話すから何も言わなくていい。」
「・・・」
無言でイルミと執事のやりとりを聞いているA。
「承知しました。」
「イルミ様、一つだけよろしいでしょうか？」
「何？」
「A様、ですが、傷の応急処置を施してはいるのですが身体中の汚れがついたままでございます。
このままではイルミ様やイルミ様のお部屋、お屋敷を汚してしまいます。
感染症を引き起こす可能性もありますので、お召し物を変えて汚れを落とす必要があるかと・・・」
「・・・！」
執事の言葉に慌てて自分の姿を見る。全身が血と泥水で汚れている事に今更気づいた。
「すみません！私…！」
慌ててベッドから降りようとするA。
「あぁ、そうだね。そのベッドは処分するから動かなくていい。新しい布団一式用意しといて。誰か一緒に風呂に入れる執事はいる？・・・一応女にやらせて。そいつに着替えとか全部任せる。オレは今からキルの訓練を一緒にやることになってるから後はよろしく。」
「承知しました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「じゃ」
「行ってらっしゃい…」
「・・・」
横目でAを見て無言で出ていくイルミ。
(怒ってるのかなぁ？)
両親と執事以外に見送られたことがなかった。
『行ってらっしゃい』と言われたのも初めてで。両親にも言われた事がない。
(殺し屋に友達はいらない…)
(Aは？友達じゃない、家族でもない。珍しく生き残ったから連れてきただけ。傷が治れば出て行く。それまでに害がないか確かめるだけ。それだけ。)
自分に言い聞かせるように考えていた。
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
