NO5 ●ミケ ページ6
「ここは…？」
目が覚めると、ベッドの上にいた。殺風景な部屋の窓に朝陽が差しこんでいる。身体を見ると傷の手当てが施されていた。
「起きた？」
扉の開く音がすると、見覚えのある少年が入ってきた。
「執事に応急処置をさせた。頭の傷が酷かったから縫ってるよ。痛むようならこれ飲めばいい。」
薬の入った袋を差し出すイルミ。
「イルミさん、、！ありがとうございます。」
「傷の手当てやお薬まで…本当にありがとうございます。
すみません、今すぐお礼はできないんですが、この御恩は必ず返します！」
「お礼ならミケに伝えて。彼が君を見つけた。」
そう言うと、窓の外を指差す。
すると大きな目がこちらを覗いていた。
「・・・！」
巨大な犬が目の前に現れる。
「私、このこに全然気づかなかった！！」
「気絶して河辺に流れついてたからね。ミケが見つけた後はオレが君からミケを離した。」
「…イルミさんが私を河から助けだしてくれてたんですか？」
「そうだけど？」
「全然気づかなかった…すみません、それなのに私、お礼も言わずに貴方から逃げるように行ってしまって・・・
本当にすみません、ありがとうございました・・・！また会えて、お礼が言えて良かった…」
「別に、河から出しただけ。」
彼は本心で言っていた。ただ河から出しただけ。それなのに感謝されている。傷の手当ては執事がした、自分は何もしていない。薬も執事が用意しただけ。誰かからお礼を言われたことも、言ったこともないイルミには彼女の言動の全てが不思議で仕方なかった。
何故自分にありがとうと言っているのか、謝っているのか…ただ事実を述べただけなのに。
ミケの大きな姿に驚きつつも、窓を開けて手を差し伸べる。
「ありがとう、あなたが私を見つけてくれたんですね！おかげで助かりました、本当にありがとう！」
ミケは彼女を見つめたまま動かなかった。光のない瞳を彼女からそらそうとしない。
(何でミケはこいつを殺さなかった？侵入者じゃない？試しの門から入ってたら執事がすぐに気づく。誰にも気づかれずにどうやって入ってきた？)
Aに対する疑念が強まっていくイルミ。
(ミケが攻撃しないならゾルディック家の敵ではない…ならもう用はないから帰すか…？いや、確実に害がないと判断できるまでは目の届く範囲に置いとくべきか…)
チラッと彼女を見る。
「クシュんっ！！」
顔を真っ赤にして鼻水をたらしている姿が目に入る。
「・・・」
(傷が治るまではおいとくか…)
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
