NO38 ●屋敷へ ページ39
「イルミさん！」
「・・・」
「あの、お店にいる時間は短くなってしまうんですが、帰ってから勉強する分夜は早めに休もうと思っていて…イルミさんが良かったら今までみたいに時々お話できたら嬉しいです…」
「・・・」
「夕飯も作るので、良かったら一緒に食べませんか⁇イルミさんがお仕事で忙しい時は難しいと思うので、今までみたいに時間がある時に良かったら…」
「・・・」
彼女の言葉にホッとした。何故？何に安心した？今までのように会える事が分かったから？変わらないままでいれる事が分かったから？オレは何の為にAに会ってる？
自分の知らない感情、これがなんなのかを知るため。
彼女に会う時間が短くなることで変わる事なんて何もない。
それなのに何故変わらない事に安心した？
会えなくなるかもしれないと思ったから？
「あの、イルミさん・・・？」
(なんか怒ってる？大丈夫かな…？)
「・・・時間があればね。」
「はい！楽しみにしてます！」
「またね〜！」
去っていくイルミにずっと手を振っているA。
(ご飯、一緒に食べれたらいいなぁ〜)
あれから3か月、イルミがぱったりと店に来なくなった。
最初の1か月は通信制学校の勉強が始まった事もあり、慣れない日々にあまり気にかけることもなかったが、2ヶ月、3ヶ月と経った頃には勉強に集中できなくなるほど彼の事が気がかりになっていた。
(イルミさん、どうしたんだろ、何かあったのかな…怒ってるのかな…私、何かしてしまったんだろうか…)
彼がこの店に来てからは月に一度、必ず訪れてくれていた。初めての状況に色々な思いがぐるぐるぐるぐると頭に浮かんでくる。
(今までずっとイルミさんはお店に来てくれてた…なのに私は彼が普段どこで何をしてるのかも全然知らなかったな…)
彼が来なくなった事で気付かされる事がたくさんあった。
彼の仕事について深く聞いたことも考えた事もなかった。今回の状況でその事に反省したAだったが、そんなAだったからこそ、彼は強く惹かれていった。
家族のことも、家の事も、全てを忘れて、ただの1人の人間として向き合ってくれた彼女だったからこそ、彼はAに引き寄せられていた。
(明日はお店がお休みだし…よし、！！)
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
