NO35 ●鼻唄 ページ36
「・・・腹、減ってない？」
隣に立っているイルミが聞いてくる。
「あ、そうだ、夕飯食べてなかったんだ…」
ごはんを食べていなかった事を思い出して急にお腹が空いてきた。
『グゥゥ〜』
「あははは、お腹空きました」
恥ずかしそうに頭をかきながら笑って答えるA。
「ちょっと待ってて。」
「はい！」
そう言うとイルミが森の中に消えていった。
「はい、これ」
戻ってきた彼の手には大量の魚と果物が。
「わぁ〜！イルミさん凄い！これ全部取ってきてくれたんですか⁈」
「うん。そうだよ。」
「ありがとうございます！早速焚き火の準備しますね！」
「美味しい！このお魚、とっても美味しいです！身がふわふわだ〜！」
「オレが取った魚だからね。」
「さすがイルミさんですね！何匹でも食べれます！」
彼の話の中で当たり前に出てくる自慢にも真面目に返すA。
「果物も甘い〜！…これ、ジュースとケーキの材料に使えそう…」
食べながらお店のメニューを頭に浮かべる。
「(ヨーグルトに混ぜるのも合いそう。酸味のある果物も入れて…)」
色々と考えているとある事を思い出す。
「(あれ、そういえばこれって…)」
「イルミさん」
「何？」
「なんだかこの感じ、出会った時を思い出します！あの時もこうやって森の中で焚き火でお魚を焼いて木の実を食べて過ごしてましたね！」
「でも、あの時と違って今回はイルミさんがお魚達をとってきてくれましたね！なんか、嬉しいなぁ〜」
エヘヘへとふにゃふにゃした笑い方をする。
「何その笑い方、気持ち悪い。」
「気持ち悪いって…イルミさん相変わらず正直すぎますね」
イルミの言葉に一瞬で能面顔になるA。
「褒めてるんだよ。」
「はぁ…ありがとうございます。」
能面顔で返事をする。
「(未だに何考えてるんだかよく分からない人だなぁ…)」
チラッとイルミの方を見る。
表情ひとつ変えずに小さく鼻歌をうたっていた。
表情はいつもと変わりないがなんだか少しだけ嬉しそうに見えた。
「・・・」
「イルミさん」
「何？」
「…ありがとう。」
「・・・どういたしまして。」
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
