光と闇【HUNTER×HUNTER】 (ページ35)

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NO34 ●ありがとうページ35

しばらくお花を眺めていると、イルミの携帯が鳴る。

「＿♪＿♪＿♪」
「イルミさん、電話鳴ってますよ！」
「あぁ、これ。」
そう言いながらポケットから携帯を出す。
「日付が変わった時に鳴る音。仕事に必要だから設定してる(ウソ)」
「もうそんな時間なんですね！てことは…私の誕生日になったんだ…」
嬉しそうに笑うA。

本当は明日を店の休みにするようイルミがエイダに提案していた。
今日この日、彼女の誕生日にこの景色を見せたかったから…。

「イルミさん、私、まだ全然記憶が戻らなくて…前は焦ってた時もあったんです。このままずっと思い出せなかったらどうしようって。でも今はそんな風に思わなくなってきていて…記憶がなくなったから今があるんだって。イルミさんに出会えたのも、エイダさんに出会えたのも、今こうしてこんなに綺麗な景色が見られるのも全部記憶がなくなったからなんだって前向きに考えられるようになったんです。」

「・・・。」

彼女がそう思うのは彼の念能力の所為か、それとも彼女自身の本当の気持ちなのか、はたまたどちらともなのか…。

「イルミさん、本当にありがとうございます、私ここに来れて凄く嬉しいです、最高のプレゼントです。」
ニコッとイルミに向かって笑いかける。

いつからだろう。彼女に『ありがとう』と言われる度に心臓が飛び跳ねている事に気づいたのは。
殺しでしかよろこびを感じない。殺し屋に感情はいらない。そうやってずっと、ずっと生きてきた。そんな自分に彼女はいつも知らなかったはずの新しい自分を引き出してくる。
彼女に今日この景色を見せたい。何故自分はそんな事を思ったのか・・・。

この感情が分かるまでは彼女を生かす。その思いが自分でも気づかない内にズレてきている事に彼はまだ気づいていない。