NO31 ●パイナップルケーキ ページ32
1カ月後、彼がやってきた。
「ギタラクルさん！いらっしゃいませ！」
「・・・」
「いつもの席空いてますよ、どうぞ！」
「・・・」
「(あれ、いつもとなんか違う？どうしたんだろ)」
「ギタラクルさん、メニューです、今日は何にしましょうか！」
「・・・ケーキとフルーツジュースと紅茶。」
「(良かった、いつものイルミさんだ。)承知しました！少々お待ちください！」
張り切ってケーキ作りに取り掛かるA。
「・・・」
そんな彼女の様子を黙って見守っていた。
「お待たせしました！召し上がれ！今日はパイナップルケーキです！」
一言も発する事なく食べ進めていく。
「(あれ〜？やっぱりイルミさん、いつもとちょっと違う？」
違和感を感じるAだった。
店も終わり、帰ろうと歩きだした途端、いつもなら部屋で待っているはずの彼が目の前に立っていた。
「あれっ？イルミさん、どうしたんですか？(って言うのも変だけど)」
部屋で待っているのが当たり前になっていたのでついそう言ってしまった。
「オレ、今日はこの後仕事だから。」
「あれ！そうだったんですね！珍しいですね、もう暗いのでお気をつけて行ってきてくださいね」
「・・・」
Aの元に近づいていく。
「イルミさん？」
そのままイルミの手がAの頭に触れた。
「(え〜どうしたんだろ…こんなの初めてされたな…)」
「イ、イルミさん、どうしたんですか？」
「・・・別に。」
「(今日のイルミさん、どうしたんだろ…)」
「イ、イルミさん！」
「何？」
「お仕事、頑張ってきてください！」
はにかみながら言う彼女の顔がとても眩しく見えた。
「・・・どうも。」
「(わぁ〜もうイルミさん見えなくなっちゃった、早いな〜)」
「(次はちょっと話せたら良いなぁ)」
そう思いながら家に向かって歩き始めた。
その後はまた、以前のように閉店直前にAの部屋に先回りして彼女を待っているイルミに戻っていた。
「(先月のイルミさんはどうしたんだろ？何かあったのかな？元に戻って良かった！)」
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
