NO30 ●針 ページ31
「・・・」
イルミの話を黙って聞いていたA。
「(イルミさんの言う通りだ…本当に大切な家族ならどうして今も私はここにいて、いまだに誰にも会えていないんだろう…
誰も私の事を探そうとしてないのかもしれない…)」
「A？」
「…確かに…そうですね…」
俯きながら答える。
「だろ？あー良かった。分かってくれて。」
「とにかくAは今を生きていけばいい。過去は気にするな。今どう生きていくかだけを考えろ。」
そう言いながらAの頭に触れる。
イルミの手が頭に触れた瞬間、嫌な空気が流れた気がした。言葉にはできない恐ろしい空気…。息ができなくなりそうな…。
普段と違う口調と雰囲気のイルミに恐怖感を抱いたA。
「(動けない…イルミさん、ちょっと怖い…)」
そんな彼女の気持ちを読み取りすぐにオーラを抑える。
「(あ、元に戻った…。)」
「ごめんごめん、ちょっとやりすぎたね。Aが分かってくれて嬉しくってさ。」
そう言った彼はいつもの彼に戻っていた。
「(なんだったんだろう…今の…)」
「そろそろ帰るよ。Aも早く寝たら？」
「…！はい！そうします、イルミさんもお気をつけて帰って下さい。」
「じゃ」
「また！おやすみなさい！」
帰っていくイルミに手を振るA。
彼を見送り、寝る準備をすませてベッドに横になる。
「(さっきのイルミさん…なんだかいつもと違って…怖かった…どうしたんだろう…)」
そう思いながら眠りについた。
「スー…スー…」
寝ている彼女に近づいていく黒い影。
「(まだこれを知るのは早い。今のAには必要ない。家族の事もまだ思いださなくていい。今は必要ない…。)」
そう念じながらAの頭に針を埋めていく。
「オレがまだ納得してないのに先にAがオレの前から消えるのは許さないよ。」
「ん〜！！もう朝か…」
なんかちょっと頭がズキズキする…
(昨日は何してたんだっけ？)
ーガラッー
「エイダさん、おはよう！」
「A、おはよう、昨日もあのお客さん来てたね、一緒に帰ったのかい？」
「？あのお客さん？」
「ギタラクルって人だよ！もう忘れたのかい⁈」
「・・・」
エイダに言われても思い出せないA。
「ん〜そうだったっけ、忘れちゃいました…」
「物忘れが始まるにはまだまだ早いんじゃないかい！」
笑いながら話すエイダにAもつられて一緒に笑う。
「(ん〜本当に全然覚えてない、ここまで物忘れ酷くなっちゃって大丈夫かな…)」
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
