光と闇【HUNTER×HUNTER】 (ページ30)

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NO29 ●大切な人達ページ30

いつからか、閉店前の時刻になると店を出たイルミがAの帰りを彼女の部屋で先に待っているのが当たり前になっていた。

「(毎回思うんだけどどうやって部屋に入ってるんだろう…鍵閉めてるんだけど…)」
この日もAが部屋に帰ってくるとベッドに座ったイルミが待っていた。

「ただいま帰りました。」

「おかえり、いつもより6分遅かったね。」
「私が荷出しを忘れてしまっていてお店を出てから一度また戻ったんです…」
「ふーん。また忘れてたんだ。ちょっと気が緩み過ぎなんじゃない？」
「ごもっともです…気をつけます…」
そんな会話をするのが2人にとって当たり前になっていた。

「…イルミさん、私、ちょっと思い出した事があるんです。」
エイダにお祝いされた日に浮かんできた光景を彼に話す。
「私、家族がいます！きっと…1人じゃなかった…とてもとても大切な人達だっていうことだけは分かるんです…」

『大切な人達』

彼女のこの言葉に引っかかる。
「誰かが私にお花をくれたんです。誰なのかまだはっきりとは分からないんですが…凄く…凄く大事な人だと思う…」
彼女の言葉一つ一つがいちいち引っかかる。
「(大事な人？Aの？)」
「あと、私今きっと12歳は過ぎてます！11歳のお誕生日をお祝いしてくれてたので…今はもう12歳なってますよ！…イルミさん？」

「大切な人？なら何でそいつらはAを探しにこないの？Aはそう思ってても向こうはそうは思ってないんじゃない？」
「・・・。」
イルミの話に悲しそうに俯くA。驚きつつも納得できてしまう気持ちがあり、何も言えなくなってしまった。
「だってそうだろ？よく考えてみなよ。本当に大切なら何が何でも探しにくる。そうじゃないって事はそれまでだってこと。」

「・・・」

「自分にとって都合の良いように思い出してるんじゃない？過去にすがったって何もない。大事なのは過去じゃなくて今だよ。Aは今を見た方がいい。」

「・・・。」

彼の言葉はAのためを思っているかのようで全ては彼自身のために放った言葉だった。
彼女が全てを思い出したらきっと大切な人達の元へ帰る。そうなったらもう今の自分達の関係は終わってなくなる。
暗殺一家の長男と関わって許してくれる人間はいない。
全てがまた元通り。お互いを知る前の生活に戻る。
彼はまだ自分でも気づいていなかった。元の生活に、Aを知る前の日々に戻りたくないと願っている自身の気持ちに…。