NO27 ●誕生日 ページ28
あれ以来彼は月に一度、お店に足を運ぶようになった。
毎回紅茶だけを注文し、Aからりんごのうさちゃんを添えたフルーツジュースをサービスされる。
そんな日々も一年が過ぎようとしていた。
「A、あたい今日はちょっと先に帰らないといけないんだ、後お願いしてもいいかい？」
「任せてください！」
「ありがとね、頼んだよ」
そう言うと足早にエイダが出ていった。
(エイダさん、何か用事でもあるのかなぁ…)
1時間程で片付けも終わり、帰路につく。
(あれ、家の電気着いてない…エイダさんいないのかな？)
「エイダさん？いないの？」
廊下の電気をつけて居間に進んでいく。
「エイダさん…？」
ーパンパンパーン！！ー
「わあああぁぁ！！！」
音に驚いたAが尻もちをつく。
「A、誕生日おめでとう〜！！」
クラッカーを鳴らしながら奥からエイダが出てきた。
「誕生日⁈」
エイダが電気をつけると、テーブルにはたくさんの料理が並べられていた。手作りであろうケーキには【A、おめでとう】の字が書いてある。
「そうだよ！Aがこの家に来てからちょうど一年になったのさ！誕生日が分からないから今日がAの誕生日だよ！」
満面の笑みで話すエイダ。
「エイダさん…ありがと…」
そう言いかけると、頭がズキズキと痛んできた。
「A、大丈夫かい⁈」
《A、おめでとう〜！！》
(エイダさん？違う、誰だろう、知ってる…前にも見た…)
頭の中に同じような光景が浮かんでくる。テーブルにたくさんの料理が並べられている。ケーキには【11さい】と書かれていた。
《お姉ちゃん、おめでとう〜！！》
男の子が私に向けてお花をさしだしている。
《これ、俺が見つけてきたんだよ！》
男の子が嬉しそうに私に話しかけてる。
(誰だろう…分からない…けどとても大切な…大切な人達…)
「・・・！A！大丈夫かい⁈」
エイダの声で我に返る。
「A、どうしたんだい！大丈夫かい！」
頭を抱えながら立ち尽くしていたAを心配するエイダ。
「エイダさん…ありがとうございます、とっても嬉しいです…私、今日で12歳になりました！」
いつもの様子に戻ったA。
「あ〜良かったよ、びっくりした！12歳⁈何か思い出したのかい⁈」
「何となく！！エイダさん、本当にありがとう…！」
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
