NO21 ●紅茶 ページ22
「ど、どうぞ…ちょっと狭いかもしれないんですが…」
「うん、そうだね。人が住む場所だと思わなかった。」
「店主さんが自宅の物置を私の部屋にしてくださったんです！」
「ゴミ箱じゃなかったんだ」
「ご、ゴミ箱⁈いくらなんでもそれはちょっと…」
「あーごめんごめん、物置ね。」
全く気持ちがこもっていない棒読みで謝罪してくる。
「(悪気があるんだかないんだか…)」
「(何でこの家の場所も知ってたんだろ…お店の事も…秘密って言ってたけど聞きだしたい…)」
そんなことを考えながら部屋に置いてあったカセットコンロでお湯を沸かし、紅茶を入れてベッドに座っているイルミに差し出す。
「イルミさん、さっきまでたくさん飲んでましたがまだ飲めそうですか？紅茶しかないんですが良かったらどうぞ…」
「砂糖とミルクはないの？」
「ないです…」
「不便だね。」
そう言いながら紅茶をすする。
「(まだ飲めるんだ)すみません…イルミさんもお元気そうで良かったです。本当におかげさまで今は仕事も住む場所も見つかりました！」
「そう。良かったね。」
「・・・」
会話が止まり部屋が静まる。
(もう一度聞こう、どうやってここが分かったのか…)
「あの！ど「オレの事忘れてた？」
Aの話を遮った彼が聞いてくる。
「忘れてなんかないですよ！忘れる訳ないです！イルミさんのおかげで今私ここにいるので…」
「32日」
「？」
「お前が出ていってから経った日数。32日経った。お礼をしにくるって言ってたのに来なかったね。」
「(凄い、数えてたんだ…)それは本当にすみません、お仕事が決まってとにかく早くお店に慣れたくて…お金もまだなかったのである程度溜まってから行こうと思ってたんです、本当です！」
「ふーん。」
それ以上何も言ってこないイルミ。
「えと、もしイルミさんが良かったらまたお店に来て下さい！エイダさんの作るお料理、とっても美味しいんです！
毎週月曜日が定休日なのでそれ以外ならいつでも！イルミさん忙しいかもしれないですが…」
「・・・」
(名前を見つめたまま何も答えない。
(イルミさん、何を考えてるんだろう…全然分からない…)
反応に乏しいイルミに困惑するA。
(すぐにお礼しに行かなかったから怒ってるのかな…)
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
