NO17 ●ノート ページ18
(古い建物だな…こんなとこに住んでるやつがいるの？)
足音一つ立てず、門を開け庭に入っていく。
(なんだこれ、ゴミ箱？)
ゴミ箱に見えた物の扉を開けると、そこにはベッドが置かれており、側には小さな机と椅子があった。
外観は古く錆びれていたが、中は綺麗に整頓されており、人が使っている場所だという事は一目で分かった。
(これ・・・)
小さな机に見覚えのあるノートが。間違いなく、自身がAに渡したノートだった。
「キャッキャキャッキャ！」
人の気配を感じ、すぐにその場から離れる。
「エイダさん、おやすみなさい！また明日ね！」
「うん！ゆっくり休みなよ！おやすみ！」
ーガラッー
扉を開け、椅子に座るA。机に置いてあったノートに何やら書きはじめた。
「ん〜！今日も終わった〜！そろそろ寝ようかな！」
ベッドに勢いよくダイブする。
「(もうここに来てから1か月経つんだ…)」
「イルミさん、何してるかなぁ…」
「・・・」
アーニャの言葉を部屋の裏でしっかりと聞いていた。
「スー…スー…」
Aが寝たのを確認してから扉を開けて中に入る。
「(こんなとこにいたんだ。こんな狭いとこで暮らさないといけないなんて普通の世界の人間は大変だね。)」
「(こんなベッドじゃ身体が痛みそう。)」
「(俺のあげたノート、まだ使ってたんだ。)」
ゴミ箱だと思った場所に探していた彼女が住んでいるとはつゆにも思わず。様々な想いが溢れてくる。
彼女が使っているノートに手を伸ばし、ページをめくっていく。
「(日記と…なんだこれ、音符？)」
ノートには日記と彼女の考えたメロディが音符で記されていた。
「オレのこと、全然書いてない」
「ん〜・・・」
もぞもぞしながら寝返りをうつA。
いつか見た光景だ。
「・・・イルミさん・・・」
寝ている彼女が呟く。
「・・・」
名前を呼ばれただけ。ただそれだけなのに心臓の鼓動が速くなり、身体が暖かくなっていくのを嫌でも感じる。
「(これ、なんなんだろ。気持ち悪い。どうしたらいいか分からない。Aは知ってる？どうしたら収まる？Aを殺せばいいのか？・・・)」
彼女の喉元に手を近づけた。
「ん〜」
幸せそうに眠っている彼女を見つめる。
「・・・。」
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
