光と闇【HUNTER×HUNTER】 (ページ13)

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NO12 ●優しさページ13

キッチン前のカウンターにAを座らせる。
「ちょっと待ってな。」
「はい…！」
驚きつつも、店内を見回す。
(凄い、1人でやってるのかなぁ？)
店内にA以外の客は見当たらない。店の明かりもほとんどなく、暗い雰囲気の店内。テーブル席が3つあり、キッチン前のカウンターは6席とこじんまりとしたお店だ。

「出来たよ！とりあえずこれ食べな！」
そう言いながら、野菜スープとハンバーグを持ってきてくれた。
「美味しそう…！！いただきます！！」
「召し上がれ！」
「・・・！美味しい…！」
「だろ！たくさん食いな！おかわりもあるから！」
「・・・っ！」
息を吸う暇もないくらいあっという間に平らげた。

「美味しかった…ありがとうございます…！本当にありがとうございます…あの、私お金がなくて…」
「いいいい、お金はいらないよ！そのかわり、使ったお皿を洗ってくれたらそれで十分さ！」
「！！本当にありがとうございます…」
すぐに食器を運び洗い始める。

「あんた、ちっちゃいのに親もいないなんて大変だねぇ。どうしたんだい？」
店主が優しく話しかけてくる。
「実は…記憶がなくて…」
「帰る場所も分からなくて…どうにもできないので働ける場所を探しているんです…」
食器を洗っていた手が止まる。
「あの・・・！！ここで働かせていただけませんか？！お金はいりません！何でもします、お掃除も、食器洗いも、材料も買いに行きます！お料理のお手伝いも！！どうかここで働かせていただけないでしょうか…？！」
「記憶がない⁈働くったってあんたいきなり…」
涙を浮かべ、今にも泣きだしそうな表情で店主を真っ直ぐ見つめるAを見て言葉がつまる主人。

「あんた、名前は？」
「はっきりとは覚えてないんですが、多分Aです…」
「Aね、早速今日から頼んだよ！まずは店の掃除からだね！」
「・・・！」
嬉しさのあまり、言葉が出てこなかった。
ここに来るまで何十件ものお店に断られてきた。
諦めかけていた時に出会ったお店。優しい店主。

記憶がない、何も分からない自分を助けてくれる人々、出会った人に与えてもらえた優しさに今にも泣き出しそうになる。

「店は21時までなんだ、それまで掃除よろしく頼むよ！」
「・・・はい！」
瞳にたまった涙を必死に拭って大きな声で返事をした。