NO1 ●あの日 ページ2
『A・・・！！』
目が覚めるとそこには見た事もない景色が一面に広がっていた。
「ここは…？」
起きあがろうとすると、身体全身に鈍い痛みが広がる。
腕や足の骨が折れていて、身体の至るところから出血していた。
一体どうして私はここにいるのか、何が起きたのだろうか。
「君、生きてたの？」
痛む傷を抑えながら考えていると木の影から少年が声をかけてきた。
「あなたは…？」
「ここ、オレの修行場。
どこから入ってきた？」
「どこから…分からなくて…何も覚えてないんです…」
「分からない？名前は？」
「名前？…」
少年に名前を聞かれ、ズキズキと痛む頭に入ってきた光景。
「A・・・！！」
誰かが叫びながら私に向けて手を差しのべていた。
「A・・・
多分、Aだと思います」
「多分？自分の名前も覚えてないの？」
「・・・・」
静かに頷く。
「ふーん。身体中傷だらけだね、3日前の嵐に飛ばされでもした？」
「嵐・・・？」
その言葉でまたズキズキと頭が痛む。
そうだ、私は大雨の中を走っていた…ずっとずっと走っていて、気づいたら激しく流れる水の中に…
口の中が塩っからく、潮の匂いがする。
「海に流されてきたのかもしれないです…」
「ふーん。ここらへんに海はないんだけどね。オレの家の山のふもとだから。とりあえず君がいたら訓練の邪魔なんだけど。」
「すみません…」
少年の雰囲気に、早くこの場を離れた方がいいと無意識に身体が判断する。
少し動かしただけでも全身に鋭い痛みが走る。それでも折れていない腕で足を支え、後ろにある木を背もたれにし、なんとか起き上がった。
少しずつ歩き始めるA。
(どこにいこう…)
少年「・・・」
歩き続けていると、すでに夜になろうとしていた。
(今日は疲れたからここで休もう…)
大きな木の下で横になる。
(どうしてここにいるんだろう。何があったんだろう。私って誰なんだろう…)
朝になり、太陽の光で目が覚める。
(綺麗な朝日…)
「いたっ・・・！」
頭の痛みに耐えていると、ぼやけた映像が浮かんできた。
『お姉ちゃんっ！』
誰かが自分に笑いかけている。誰だろう。
顔が見えない。
貴方は誰・・・？
(思い出せない・・・誰なんだろう)
「(とにかく、進もう)」
歩き始めるA。
(お腹すいたなぁ…)
物陰から彼女を追う少年の姿が。
(まだ生きてる。意外としぶといな。)
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作者名：301 | 作成日時：2023年8月7日 15時
