呼吸と鼓動のエトセトラ/sy ページ6
何も無いこの部屋に、僕は彼を呼び出した。
家具もなければ窓もない、ただ一つの開け放たれたドアを残してコンクリートで1面おおわれたこの部屋に。
『あ、やっときた。』
不意に落ちた影に顔を上げる。
いかにも不機嫌そうで怪訝そうな彼の顔を見て少し嬉しくなった。
「なんだよ。こんなとこに呼び出して。オレも暇じゃないんだけど〜」
そう言いつつも律義に来てくれる彼に感謝しつつ話し始める。
『いや、マジで来てくれるとわ思わなかったわ。頼み事があってさ』
訝しみながら彼は口を開く。
「ハ?なんだよ、いきなり」
意を決して声に出す。いざ言おうと思うと案外怖いものなんだなぁ。
『首絞めてさ、殺してくんない?』
「ェ、やだ。」
即答で拒否する彼。まぁそりゃそうだよななんて呑気に思う。
「逆にオマエはなんで。はい。いいですよって言われると思ったんだよ。イヤだよ。オレ人殺しになりたくないし」
『へへーん、そこはご心配なく。自分でですって遺書書いたからドヤ』
お前の頭が心配になるわ、とかブツブツ言いながら考え始める彼を見て、あー僕って愛されてるんだなぁって思ってしまう。
「なぁ。本当にオマエは死にたいの?」
何をわかりきったことを、殺してと言ってるじゃないか。
「ナニがあったのかも、なんでそんなこと思いついたのかもわかんねぇ。でもな、オレはオマエに生きて欲しいと思う。」
そんなに真っ直ぐ見つめないでよ。いつもみたいにテキトーに流してノリで殺してよ。
『.......』ツー
「?!泣くほどのことか?あー、ヨシヨシどうした?」
背中を擦りながら寄り添ってくれる優しさに涙が止まらなくなる。やめてよ。急に優しくしないで。
「満足するまで泣けよ。な?」
『..うん』
泣きじゃくって泣き疲れて、それでもやっぱり死にたくて。
『ね、しゆちゃ。やっぱり、しゆちゃの手で死にたい。』
「......そうか。わーったよ。殺してやればいいんだろ?...コッチ来い」
向き合っても、泣き腫らした不細工な顔を見られたくなくて俯いていると、前髪をかきあげられ、キスを落とされた。
啄むような触れるだけのキス。それだけでふわふわしてどうでも良くなりそうになrッ
キュゥ
「ハッ、ブッサイクな顔wほら苦しめよ。なぁ?!」
ギュウ
段々握る力が強くなってくる。
霞んだ視界と、薄れる意識の中で涙を浮かべる瞳とその声だけはハッキリとわかった。
「また、来世でな」
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なつみ(プロフ) - 夢月さん» はい!そうですね。ありがとうございます。 (2022年5月17日 4時) (レス) id: aeadad0f29 (このIDを非表示/違反報告)
ひばな - 夢月さん» もし夢月さんの作品が終わってしまったら次は私が作りますよ。死ぬまでずっと夢を見続けましょう。殿を応援し続けられるように (2022年5月16日 19時) (レス) @page9 id: f740c7abc7 (このIDを非表示/違反報告)
夢月(プロフ) - ひばなさん» コメントありがとうございます。自分も殿みたいになることが生きる意味でした。表に立つこと、ソロじゃ見れない絡み、その全てを失ってぽっかり穴がいた気がします。もちろん、いつまでも夢を見ていてください。私が終わっても、、、 (2022年5月16日 12時) (レス) id: 655f2862b9 (このIDを非表示/違反報告)
夢月(プロフ) - OM2q3AvNej3V6Scさん» コメントありがとうございます。まず、自分の選択を受け入れてくださりありがとうございます!心が頭の理解していることに追いつけないですよね、、、、乗り越えるんじゃなくて、一緒に抱えていく選択でもいいかなと思いまして。これからもどうぞ、お付き合いください。 (2022年5月16日 12時) (レス) id: 655f2862b9 (このIDを非表示/違反報告)
ひばな - 初コメ失礼します。こんなに人生が疲れたと初めて思いました。殿の存在や価値観が私の存在の証明。私の価値だったんです。どんなに批判されても殿が1番だったから。この作品が終わるまでは夢を見ても怒られませんよね (2022年5月15日 19時) (レス) @page8 id: f740c7abc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢月 | 作成日時:2022年4月19日 18時