灰色の日々を飾るアイ ページ19
彼から手渡された、一式の着替えを手に呆けていれば「下にいるから」とだけ残して部屋を出ていってしまった。
不思議に思いながらも、彼の言ったことである以上、疑う必要も従わない理由もなかったので深紅のドレスに袖を通す。
シンプルなデザインの中に、オーガンジーのレースと黒い刺繍があしらわれており、高級感のある作りになっていた。
下品になら無い程度に開いた胸元には彼からもらったクロスのネックレスを飾る。
化粧をして、軽く髪を巻いて身支度を整え終える。
玄関には見慣れないパンプスが。
躊躇なく足を通せば吸い付くように履けた。
階段を駆け降りて彼のもとへ向かう。
「お、やっと来た。めっちゃいいじゃ〜ん。でも、そのネックレスは減点かなぁ」
何やらお気に召さなかったようで、減点されてしまう。シュンと落とした肩に温もりを感じると、腰に回された手で動けなくなる。
「今日のお前には、こっち」
先程まで胸元にあったクロスはシンプルなリングに変わっていた。
はっとして見上げた顔には余裕の笑み。
馴れた手つきで助手席のドアを開けてエスコート。
「こちらへどうぞ、お姫様?俺の手をとって。」
その誘惑からは逃げられそうにない。
「行こっか。」
隣に腰掛けハンドルを切る姿も様になっていて、かっこよくないところはどこなのだろうと思えてしまう。
彼らしい黒のシャツの上に羽織ったえんじ色のジャケットにあしらわれた刺繍は先程袖を通したドレスのそれだった。
さりげないところに現れる彼の独占欲にクスッと笑いを溢す。
「何笑ってんの〜。よくないこと考えたでしょ。」
素直に答えれば口を尖らせて彼はいう。
「俺はかっこいいの。そんなことで笑えるお前の方がかわいいだろ。」
かわいいと言われて頬を赤らめれば右から伸ばされた手が髪を撫でる。
日常の延長線みたいな非日常な毎日にあなたがいることが幸せだった。
今日みたいに唐突に連れ出されることも数を重ねるごとに驚かなくなったが、彼のしぐさや言葉にドキドキするのに慣れそうにない。
「ん、着いた。ちょ、見ないで。下みてて。」
手をとられ引かれるままに歩く。
「お前の一番欲しいものって、好きなものって何かなぁって考えて、俺かなって思ったんだよね。だから、これは俺からの誕生日プレゼント。顔あげな。」
チュ
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なつみ(プロフ) - 夢月さん» はい!そうですね。ありがとうございます。 (2022年5月17日 4時) (レス) id: aeadad0f29 (このIDを非表示/違反報告)
ひばな - 夢月さん» もし夢月さんの作品が終わってしまったら次は私が作りますよ。死ぬまでずっと夢を見続けましょう。殿を応援し続けられるように (2022年5月16日 19時) (レス) @page9 id: f740c7abc7 (このIDを非表示/違反報告)
夢月(プロフ) - ひばなさん» コメントありがとうございます。自分も殿みたいになることが生きる意味でした。表に立つこと、ソロじゃ見れない絡み、その全てを失ってぽっかり穴がいた気がします。もちろん、いつまでも夢を見ていてください。私が終わっても、、、 (2022年5月16日 12時) (レス) id: 655f2862b9 (このIDを非表示/違反報告)
夢月(プロフ) - OM2q3AvNej3V6Scさん» コメントありがとうございます。まず、自分の選択を受け入れてくださりありがとうございます!心が頭の理解していることに追いつけないですよね、、、、乗り越えるんじゃなくて、一緒に抱えていく選択でもいいかなと思いまして。これからもどうぞ、お付き合いください。 (2022年5月16日 12時) (レス) id: 655f2862b9 (このIDを非表示/違反報告)
ひばな - 初コメ失礼します。こんなに人生が疲れたと初めて思いました。殿の存在や価値観が私の存在の証明。私の価値だったんです。どんなに批判されても殿が1番だったから。この作品が終わるまでは夢を見ても怒られませんよね (2022年5月15日 19時) (レス) @page8 id: f740c7abc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢月 | 作成日時:2022年4月19日 18時