黄緑担当です。9

○With toi ページ39

✻


・カッコいいきみくん、
可愛いきみくんの姿は

どこにもありません

＿＿＿＿＿＿＿＿



「ねえ、きみくん」


「どしたの遠井ちゃん」


教室を走り回るきみくんを
呼び止めると、即座に私の方へ来る。

…正直ビクるからやめてほしい。


「最近、きみくん

遠井さんシリーズで不憫すぎるから
特別に私が企画を持ってきてやったわよ」


「マジ？それは嬉しいね」


可笑しい。

きみくん笑顔なのに、
目が全く笑ってすらない。

どんだけストレス溜まってたんだコイツ。


「私がお題言ってくから
そのお題に沿って演技して」


「うんうん、おっけー」


結構考えてきた内容を
まとめてきたから、

ずっと不憫だったきみくんにも
せめてメインを入れないと。


「『女の子の日の彼女に』」


「俺が10ヶ月止めてあげようか？」


「お前初っ端から最低だな」


「えー？軽く冗談で言ったけど…」と
笑いながら言うきみくん。

『軽く冗談』とか
そんなもんじゃないだろ。

「ハイ次ー」と言いながら、
次のお題へと移っていく。


「『女の子からの告白』」


「嬉しいなー…………で？

具体的にどんなところ好きなの？

「優しい」ところとかは
俺はどんなところが優しいの？

曖昧な理由とか本当に無理だから」


「はい、ストップー」


最初は嬉しそうに笑っていた
きみくんだったが、

最後に目にハイライトを無くして
早口で淡々と言っていた。

正直内容が重すぎる。


「え？何？」


「重いわお前…ハイ次
『バレンタインにチョコ貰った』」


「俺本命以外受け付けません」


「敬語だからって許されると思うなよ？」


仲の良い友達にこれ言ったら
笑われるか、ドン引きされるかの二択。

もし、本当に好きな子から貰って
こんなこと言ったら冷めるぞ？


「『浮気された』」


「よし、別れよっか

え？別れたくないの？
俺だけを愛してるの？

は？だったら何で浮気したの？
浮気した癖に俺だけとか矛盾してるけど

マジそういうのきしょい」


「カット」


段々と怖くなってくるきみくんに
一応カットを入れる。

コイツがもし彼女とか出来たら
大変そうなんだろうな。


「いや…別に良いとは思うんだけど…
そうくるか……次行くわ

『添い寝』」


「夜の運動会やる？」


「添い寝だっつってんだろ」


キメ顔で脳内で決めた台詞を言う
きみくんだけど、

ちゃんとやるところと
やらないところの差が激しすぎるんだよな。

全部真面目だと思うけど…。

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