第三十四話 私と狐と三日月と ページ39
上巳は、こんのすけに先導され道場へ向かった。
途中、廊下からは中庭が見えた。柔らかい緑の色に目尻を下げる。
「上巳様！ 道場に到着しました！！」
こんのすけは、そう言うとしゅぼんと音を立て姿を消した。
「お礼、言う暇なかったな……」
上巳は苦笑した。そして、道場へ視線をやった。自然と背筋がピンと伸びる。扉を開けると、一礼して中に入った。
中には、誰もいない。静寂が上巳を包み込む。
上巳は、暫しの間そこに佇んでいた。呆けたように佇む上巳に、男の声がかかった。
「……おや、主様ではありませんか。どうなさいました？」
ハッとして振り返ると、見慣れぬ動きやすそうな衣装を纏った小狐丸がいた。おそらく、彼の内番衣装だろう。そうあたりをつける。
「……あー、いえ。何でもありませんよ？」
「その割には、あの管狐と一緒だったようですが」
ちょっと拗ねたような小狐丸の言葉に、上巳は小さく笑った。
(……なんか、可愛いな)
「……む、主様？」
「いえ、大したことは無いのです。ただ、本丸の間取り全てを把握しているわけでも無いので……。こんのすけに案内して貰ってたんですよ」
「なるほど」
一応は納得してくれたようだ。
「……立ち話もなんですし、縁側にでも行きませんか？」
上巳は辺りを見回した。確かに、ここで立ち話は、ナニカが違う気がする。
上巳は頷き、おとなしく付いて行った。
ーーーー
ーーー
ーー
縁側には、同じく内番衣装に身を包んだバンダナを付けた男がいた。バンダナからは黒髪が覗いている。……この本丸に、黒髪の刀剣男士は一人しかいない。
上巳は、小さく呻いた。
それに反応してか、男が、三日月宗近が振り返る。上巳は、三日月宗近の姿を見て思わず噴き出した。
「ﾌﾞﾌｫｯ」
不意打ちだった。
白いインナーに、くすんだ青の作務衣。ここまでは良い。問題は、頭に巻いていたバンダナだった。黄色を地とした生地に、真っ黒な三日月と丸が描かれている。
どれも、単体なら良かった。しかし、三日月宗近の超絶美貌と合わせるだけで、イロイロと壊滅的だ。
美形なら、服はなんでも似合う。確かにそれは一定の真理だ。しかし、これはなんか違う。
(……これ、ダサくない？)
上巳は、素直にそう思った。ジャージ姿の方がマシかもしれない。
自分の姿を視界に入れ、唐突に噴き出した主の姿に三日月宗近は首を傾げた。
第三十五話 三条の疑問 前→←第三十三話 こんのすけと一緒！in本丸
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清河清明(プロフ) - 鞠璃音さん» コメントありがとうございます！！これからも頑張ります！！ (2016年10月23日 23時) (
レス) id: 4a48ec0504 (このIDを非表示/違反報告)
鞠璃音 - 友人に薦められて読みました！主人公の行動が斜め上で、面白いです。これからも更新頑張って下さい！！ (2016年10月23日 23時) (レス) id: 1bb56d4b39 (このIDを非表示/違反報告)
清河清明(プロフ) - ゆめゆさん» ご指摘ありがとうございます！きっちり修正しました。コメントありがとうございました！！ (2016年10月15日 15時) (レス) id: 4a48ec0504 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめゆ(プロフ) - 隊の名前が間違ってますよ！魚鱗陣に有利なのは逆行陣ですよ！ (2016年10月15日 15時) (レス) id: 31a1160be4 (このIDを非表示/違反報告)
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