となりのムスッとくん。２

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数学の授業が始まって、
さっきの落書きされていたページを開くと
怜央くんの筆圧はどれだけ強いのか、
うっすらと跡が残っている。

怜央くん、絵上手いんだなぁ。

なんとなく下手そうなのに。
なんて関心を持ちながら次のページを開くと、
そこにはまた、“誘う！”と書いてあった。

今度は横に可愛らしい、おばけらしき絵。

よくわかんなかったけど、
おばけの隣に一つ目小僧の絵を描いて、
「授業ちゃんと受けるんだぞー！」と
吹き出しをつけておいた。


「こら！岸！集中しろ！」

そんなことをしていたら
数学の教師にいきなり怒鳴られて身体が
ビクッとなってしまう。

集中しろ！って言われて反射的にしてます！
なんて言っちゃった。

すると教師はニヤリと笑い、

「じゃあこの問題前出てきて解いてみろ。
途中式も全部かくんだぞ〜」


そう言ってみせた。……解けないよ！

「どうした？解けないのか？
先生の話聞いてたらちゃんとわかるよなー？」

どうしよう……紫耀は居眠り中だし、
(というか聞いても意味ない)
理沙ちゃんは知らんぷりだし、
永瀬くんは…聞けないし。

と思っていたら。

隣で影が動き、「公式はわかる？」と
小声で聞こえる。……永瀬くんだ。

隣を見ると、少しだけこちらに乗り出しながら
私のことを見ていた。

ドキッ。わかりやすく胸が高鳴る。

……じゃなくて、公式…！

「わからん？」

どの公式使えば良いんだろう……！
わー！と焦って教科書を捲っていたら、
付箋が貼られ、そこにわかりやすく
公式が纏められているのを見つける。

怜央くんの字だ。


「前出てこーい」

もう！うるさいな！

前に出て、怜央くんの纏めた公式に
当てはめながら問題を解いていく。
わかりやすく、いつもよりスラスラと出来た。


「お、正解。」


みんな、おー！となって拍手をしてくれる。
嬉しいけど、なんか恥ずかしい。

紫耀も今起きたのか寝ぼけた顔で
何もわからないはずなのに、
笑顔で拍手をしているのが見える。

「…だけど！
お前はいつから長妻怜央になったんだぁ？」

「……？」

なんで急に怜央くん？と一瞬考えて、あっとなる。

…教科書だ！
教科書を持ったまま前に出てきたので、
怜央くんの名前が教師に見えてしまったのだ。

なんか今日はついてない気がする。
そんな事を考えながら席に戻り、
永瀬くんの様子を伺う。

…ムスッとしてる。この顔は久しぶりに見た。
折角教えてくれようとしてたのに、
また怒らせちゃったのかな。

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