娘じゃないもん **りりの場合**

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｢離さないよ？
きちんと話をしなくちゃ

りり？家族だろ？｣

真剣な顔でそういうアッパに掴まれた腕を
離して欲しくてブンブン振り回して

｢今日は出さないよ？
りりがどうしてそんな風に思ったのか

それを聞くまで離さないから｣

静かに響くアッパの声が
静か過ぎて...
怖かった



なんとかしてここから逃げよう

そう思いながら

｢解った...｣


って腰掛けるふりをした時一瞬緩んだアッパの手を振り払って
必死で部屋まで走った

｢オンニー！待ってオンニ!!!｣

縋り付くるるの叫ぶような声も振り切って
部屋に入ると鍵をかけて
震える手でちっちゃなスーツケースに必要なものを詰め込み始めた


｢オンニ！オンニ開けてよ？
オンニ？｣

ドンドンと扉を叩きながら呼び続けるるるの泣き声と

｢りり！開けろ！
きちんと話をしないとダメだよ！｣

ってアッパの声を聞きながら窓から家を飛び出した


靴...取りに行けないな

室内用のスリッパのまま
泣きながらゴロゴロスーツケースを引きずって
駅に向かって歩いた

きっと...
もうあの家には帰れない

私が...壊したから
本当は...
暖かくて、優しくて
愛に溢れてたあの家

それを壊したのは...私の一言

謝れば...許されるの？
そんなこと...無いよね


ヒチョル...助けて？
ヒチョル!!

抱っこして

“そりゃ、お前が悪ぃな”

って言って？

“バーカ
一緒に謝ってやろうか？”

って笑って？

電車の中でしゃくり上げる私をみんなが遠巻きに見てて
なんとかして涙を止めて
真っ暗なだけの車窓をただ眺めてた

ふわっと出た地上も夜の闇に飲まれてて
やっぱり真っ暗な中
輝く光がまだ瞳に残ってた涙で滲んで見えた

下唇を噛み締めて

“泣くもんか”

って前だけを見て
ヒチョルの家に一歩ずつ進んで行った
通いなれた道なのに
その日はやけに遠くて
ゴロゴロ、ゴロゴロ
乾いた音を聞きながら
やっとたどり着いた家には


誰も居なかった...


もう、何も考えずに
ベッドに飛び込むと
声を上げて
泣いて、泣いて、泣いて

そのままヒチョルの香りに抱かれて
泣き疲れて
いつの間にか眠ってたんだ




｢オンニ...らら、それ覚えてる｣

｢え?!｣

あんなに、ちっちゃかったのに？

｢オンニが部屋から出た後
ママが座り込んでこんで私をぎゅうってしながら泣いてて
しばらくして、すごい顔したアッパが走り抜けて車でどこかに出ていって
るるちゃんが、泣きながら
“オンニが居なくなった”
ってお部屋に来たの｣

そっか...ゴメン

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