娘じゃないもん **りりの場合**

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見なきゃいいんだよ

そうは思うけど
目を離すことができなくて

向こうをむいてるりりの顔は見えねぇけど
くるくる変わる男の顔が破顔して
雄叫びでもあげてんのか？
なんて格好をしたと思ったら

あいつを...抱き締めやがった

嫌がれよ？
突き飛ばせ！

俺のそんな思いは全く届かずに
そのまま抱き締められてるりり...


何だこの気分
スッゲー気分悪ぃ

あれか？娘を取られた的な
そんな気持ちか？

あいつが困ったときや
嫌なことが有った時
頼ってくるのは俺だって思ってた

あいつの心を安定させてやれんのは
俺だけの役目だって

そう思ってた

俺しかいねぇんだって



だけど今
目の前でそうじゃねぇって言われたみてぇで
俺の足元で地面がガラガラ音を立てて
崩れ落ちていくみてぇで

なんでだろうな
笑いが出てくる

俺の十数年って
何だったんだろうな？



あいつの事を思えば
そりゃ恋愛の一つや二つ有ってもおかしくねぇんだけど
なんだ？
この何もねぇ
みたいな気持ちは？


俺はあいつの...りりのなんなんだ？
りりは俺にとって...なんなんだ？

ガキだって思ってた
まだまだガキだって



ヤベ！
帰ってくる！

相手の男に手を振ってリリがこっちに向かって歩き始めるのを見て
慌ててソファに体を横たえた





少しすると玄関が解錠された電子音がなって


｢ただいまぁ｣


って弾んだりりの声が部屋に響いた
バレちゃいけねぇ
俺は何も知らねぇ
何も見てねぇ



｢ん？でけぇ声だな(笑)｣

眠そうな声で応えると

｢ヒチョル？｣

って不思議そうな
それでいて嬉しそうな声に思わず

｢なんだよ？いちゃ悪いかよ｣

なんて言いながらおきあがって
両腕を広げると
すっぽりと腕の中に収まって


｢うぅん(笑)ただいま｣


っていうりりに
耳元で

｢おかえり｣

多分いつもより優しくて甘い声で
囁いてた



おかえり...か
俺んとこに帰ってこいよ
お前の帰ってくるとこは...ここだろ？


今は、見ないでおいてやるから
ここに帰って来い

いつもならすぐに離す腕を
その時は
外すことができなかった

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