無機質に、彩りを。(K.Sakurai) ページ19
ー 2005年、夏。
「ねえ。櫻井くんの写真、コンクールに出しても良い？」
『え、あかんに決まってるやん』
「なんでよ綺麗に撮れてるのに」
ゆるめのキャラクターがぽつぽつと落書きされているノートに、真剣に授業内容を書き込んでいる彼の顔をファインダー越しに眺める。
端正な横顔、線が細くて、どこか掴めないアンニュイな雰囲気。
人の写真を撮るのが好きな私にとって、櫻井くんという被写体はまさに理想ど真ん中の人だ。
穏やかに晴れた春の空や、そよ風が吹く広々とした草原。それから、古書がたくさん並べられた図書館とか。
いつかそういった、五感がフル稼働するような場所に、無機質な彼をぽつんと存在させてシャッターを切ってみたい。
まあ、そんな話をしたところで彼が快く頷いてくれるとは思えないのだけど。
『書き忘れはない…な。よし、できた。Aちゃんノートありがとう』
「いえいえ。お役に立てて何よりです」
『はぁー。なんか甘いもん頼もうかなぁ』
「朝からめちゃくちゃ集中してたもんね」
『せやねん。"トウ"を欲してるわぁ』
彼の言う"トウ"は、いわゆる糖分のこと。
なんとなく波長が合って今日まで一緒に過ごしてきてるだけあって、櫻井くんの絶妙に独特なその言い回しなど、今ではなんの違和感もない。むしろ、耳触りが良くて安心する。
『でらっくすちょこれーとぱふぇ、やって』
「おいしそー」
『な。しかも期間限定やし。これにしようかなぁ…。Aちゃんなんか頼む？』
「んー。私はドリンクバーあるからいいかな」
『あ、そう？』
「櫻井くんのパフェあとでひと口貰うかもしれないけど」
『せこ』
「うるさ」
ほんの一瞬の無言と共に目が合えば、ふたりしてクスクス笑う。
もうピンポン押すで。と、彼の細くて長い指が日常の続きを急かした。
常々思う。
あなたと一緒にいるのは、とても心地が良い。
のに、
最近思う。
あなたと一緒にいる時間が、以前よりも少なくなっている気がしていると。
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musubi.(プロフ) - ユキさん» 貴重なご意見ありがとうございます！作者としましては櫻井さんもまた中々に捗りがちなので、移転先でもちょこちょこ作品を投稿したいと考えてます^_^ (2021年9月10日 20時) (
レス) id: 2c2c22a77b (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - こんにちは。どのお話も素敵で大好きですが、櫻井さんのお話が本人のイメージにぴったりでした。更新楽しみにしています。 (2021年9月9日 20時) (レス) id: 03f475eb75 (このIDを非表示/違反報告)
musubi.(プロフ) - na__175さん» まさか感想をいただけるとは…！この度はコメントいただきありがとうございます！今後も、リアルでキュンとする作品をお届けできればと思っております^_^ (2021年9月5日 22時) (レス) id: 2c2c22a77b (このIDを非表示/違反報告)
na__175(プロフ) - 野田さんの作品、セリフの感じが本人ぽくてキュンときました、、、、また楽しみにしています！ (2021年9月5日 20時) (レス) id: 24730842e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：musubi. | 作成日時：2021年1月12日 23時
