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.．寝転がったまま、おにぎりをほお張る。重力のままに落ちてくる米粒がからまって、呼吸が難しくなって咳をはらった。そのとき、伏黒さんの声がした。
「ははっ。詠見も案外、馬鹿なのか」
左を首だけで見て、そこで笑う伏黒さんの表情は、いつもの仏頂面にあまり見ない、なんだ柔らかい雰囲気で、わたしはそれを見ながら、おにぎりを呑み続けた。すると伏黒さんは怪訝な表情をする。
「ちゃんと、噛まないか」
『それでも、お米は甘い』
言うと伏黒さんは、もうなにも喋らなくなった。先ほどよりも深くなった額の皺を持って、こちらを見下ろしている。
「...デンプンがどうとかって、ことか？」
わたしはうなずいた。
すればまた、無言になって、わたしは空を眺める。薄雲はやはり動いていた。こちらではあまり風が吹いてなくとも、ここよりも高い場所では、風が強く吹いているんだろうか。そんなことばかりを浮かべていた。
この無言がわたしはだんだん、かなしくなってきた。伏黒さんが会話を展開しようとしないのが、かなしいわけじゃない。空ほどに高い場所では風が強く吹いているのに、わたしのいるこの場所では、なんの衝撃も、震撼も、なにもないのが、それがなぜだか悔しかった。
たしかにわたしはこの薄雲に、嫉妬したのだった。
馬鹿な話だ。そしてそんな馬鹿な話に、わたしは泣きそうになっている。わたしは、縋る。
『ねぇ、伏黒さん。空が、高いね』
「あぁ」
『宇宙は、ビッグバンの急膨張で、誕生したって、言われてるね』
「...あぁ」
『ほかにも、世界はきっと、あるんだね』
「あぁ」
『考えたら、わたしたちは、小さいね』
「あぁ」
『生きることは、つらいね』
その言葉には、伏黒さんは答えなかった。涙は目尻で
*
海に着いて、その青を楽しんだわたしたちは、帰りの車は女子班と男子班で分かれることとなった。つまりわたしは、釘崎さんと、真希さんと、家入先生と一緒だ。そしてそんな女子班で開かれるのは、もはや定番とも呼べる、恋愛事情聴取、いわゆる、"恋バナ"だった。釘崎さんと、若干家入先生が、乗り気だった。
「で？Aはあいつでしょ？あのむっつり野郎」
「伏黒ってむっつりなのか」
「えぇ。あれは重症のね」
「どんまい恵」
真希さんは憐憫に手を合わせた。わたしも、合わせた。
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うずのしゅげ(プロフ) - 夕さん» こちらこそありがとうございます😭😭 こんなに昔の作品を見てくださる方がいるだなんて😭😭😭 世界観にも文章にも美しさを大切にして書いているのでそう言ってもらえて本当に嬉しいです！ (9月23日 22時) (
レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
夕 - 美しい世界観と文章に惹き込まれました。素敵な作品をありがとうございました！ (9月21日 19時) (レス) @page39 id: 420ebc061f (このIDを非表示/違反報告)
片陵 朔(プロフ) - 琥珀さんさん» ありがとうございます！うれしいです。またぜひ読みに来てください。 (2022年6月25日 19時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀さん - おもしろかったです！ (2022年6月25日 17時) (レス) id: d4c8f7af2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うずのしゅげ | 作者ホームページ：https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7
作成日時：2022年4月24日 11時
