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._彼女は、人を取り込むようにして人間関係をつくる。いや、人間関係、というほどでもない、本当にささいな、すれ違った人と自分自身でさえつながって道理を思う、というような。

 いってしまえば、きっとそれはとても疲れる生き方だ。おれはもうやめた。

 そんなふうに他人に干渉して生きていたら、苦しいほかない。なんならおれたちは呪術師だ。

 賢い彼女が、そうして人を見るその理由を、おれはずっと考えていた。いまだに“正しい”答えは分からないし、言ったってそんな答え、当人だけのもので、ある種他人であるおれには、当然だが理解することのできない事柄であるのだが、それでも、なんだか感じるところはあった。

 きっと、それが彼女の思想であって、なんども考えて、導かれたものなのであろう。

 善人や、悪人の線引きだって人それぞれだし、そもそもそんな二つで人は、区切られるものでない、それも一つの考えだ。

 つまり彼女は、まだ考えている途中なのだ。一生それはたどり着かないかもしれんない、それでも考えずには、いられない。

 そうして考えることは、きっとやさしさで、ようするに、彼女は万物を寛容に受け止めたいのだと思う。

 すべての人を、ものを、愛しているのだ。きっと。

 それはすてきな生き方だと思う。だって疲れる人生が悪いものだなんて言いきれるものではない。

 虎杖も、虎杖をよく思わない先輩にだって、彼女は受け入れようと必死だった。

 それが作用して、彼女は唇から血を垂らした。

 強くかみしめたのだ。思うと切なくて、とっさにおれは、ハンカチを渡した。受け取るとき、彼女のおれを見上げる青い瞳は揺らいでいた。

 それを見たら、なんだかおれは、純な気持ちに澄まされていって、とにかく不思議な感覚だった。

 先輩が俺に投げた問いも、答えによってはおれが傷つかない未来もあったのだろうが、詠見のあの表情がまだ、頭の中で響いていて、その“純”な気持ちでは、とてもそれに反したことは言えなかった。今も後悔はしていない。

 またあるときは、彼女と文学の話で盛り上がった。太宰治の「斜陽」についての感想を彼女に求めたとき、傑作ですとしか答えなかった彼女に、おれは言ってみた。

 もっと、詠見が思ったことを言ってほしい。

 今思えば恥ずかしい台詞だ。それでも、少ししてから詠見は答えてくれた。

 それがおれは、うれしかった。
 

ー3→←8 アビスの君



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うずのしゅげ(プロフ) - 夕さん» こちらこそありがとうございます😭😭 こんなに昔の作品を見てくださる方がいるだなんて😭😭😭 世界観にも文章にも美しさを大切にして書いているのでそう言ってもらえて本当に嬉しいです! (9月23日 22時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
- 美しい世界観と文章に惹き込まれました。素敵な作品をありがとうございました! (9月21日 19時) (レス) @page39 id: 420ebc061f (このIDを非表示/違反報告)
片陵 朔(プロフ) - 琥珀さんさん» ありがとうございます!うれしいです。またぜひ読みに来てください。 (2022年6月25日 19時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀さん - おもしろかったです! (2022年6月25日 17時) (レス) id: d4c8f7af2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年4月24日 11時

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