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.「A、か。そうだな」
「交流会の、あの日から、会えてないもんな」
辺りの空気が、重く沈む。
「原因、みたいのって、なんだか知ってるか?」
パンダ先輩が問いたので、あたしは答える。
『真人って、先生が言ってた呪霊、そいつに、やられたの』
「あいつ...!」
「悠仁、知ってるのか?」
「人を、
虎杖の言葉が、たどたどしくて、文法がなっていない。それから、とめどない、憤りを感じた。
『そう。それで、Aは、その“人”を祓ったらしくて』
「病まれてるって、わけか」
『うん。おそらく、だけど』
もういちど、深く沈む空気。それは、いくらか続いた。
「海、行かないか」
伏黒が、口を開いた。
「はぁ?」
「海、行ってさ、無理矢理だけど、朝に起きられるようにすればさ、生活から、改善されるんじゃねぇの?」
「あぁ!なるほど、伏黒ぉ」
「うん。いいな。生活習慣から、ってことだよな」
みなが納得してうなずき合う。たしかにあの子は、昼夜逆転の生活を送っている。そんなままで、授業を受けるなんてことは、到底無理だろう。
「じゃあさ、いつにする?」
「車は、先生たちに出してもらえっかな」
和気あいあいと、話が進んでゆく。一週間後。一週間後の、土曜日。それぞれに食事を用意して持ってくること、午前の十時には出発して、車は二台、なんとか用意してAを連れていくこと。
「いやぁ、しかしひっさしぶりだなぁ。こんな、遠足じみたこと」
「パンダー。嘘つくなー」
「夢で見たんだよ!三回!」
「なんか、悲しくなってくるな...」
「勝手に憐憫浸ってんじゃねぇ!泣くぞ?お?パンダも泣くんだぞ?」
あたしはこっそり、この様子をシャッターでおさめた。今日、あの子に、見せようと思った。伏黒が、左端に、映っている。
*
Aは、今回の遠出に、否定的なようではなかった。しかし、興味を持っているわけでもない。こくり、と、ただうなずくだけだった。
当日になってもぼーっとしたままのAに、あたしむりくりテンションを上げて接していた。
『たんす、開けるわよー。ってうわ、着物しかないじゃない』
『ヘアセットとメイクは、あたしがする。だから着替えっていうか、着付けっていうか、それは、自分でやってね』
Aは、ひとつ、うなずくだけだった。
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うずのしゅげ(プロフ) - 夕さん» こちらこそありがとうございます😭😭 こんなに昔の作品を見てくださる方がいるだなんて😭😭😭 世界観にも文章にも美しさを大切にして書いているのでそう言ってもらえて本当に嬉しいです! (9月23日 22時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
夕 - 美しい世界観と文章に惹き込まれました。素敵な作品をありがとうございました! (9月21日 19時) (レス) @page39 id: 420ebc061f (このIDを非表示/違反報告)
片陵 朔(プロフ) - 琥珀さんさん» ありがとうございます!うれしいです。またぜひ読みに来てください。 (2022年6月25日 19時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀さん - おもしろかったです! (2022年6月25日 17時) (レス) id: d4c8f7af2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うずのしゅげ | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7
作成日時:2022年4月24日 11時