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.「だからさ、とおちゃんも悪いひとじゃないんだ。A、とおちゃんのこと、嫌いかもしんないけど、まぁ、そう言うなよな」

 兄は言った。兄は、笑っていった。自嘲するみたいな、傷付いた笑顔だった。それを見ると、かなしかった。兄がこらえている涙を、わたしが流してしまいそうで、申し訳無かった。でも、こらえられなかった。

『ごめん、にいちゃん。ごめん、ごめん』

「なぁに泣いてんだよ。それに、謝ることじゃ、ないだろ?」

 そう言う兄の声の語尾が震えている。あぁ、泣くのだ、そう思う。初めて見る、兄の泣く姿。

 ずっと、言えなかったこと、ずっとひとりで、かなしかったよね。

 でもね。わたしがいるよ。にいちゃんは、ひとりじゃないんだよ。

 言ったら、兄は、わたしをぎゅっと抱えて声を出して涙を溢れさした。この広い畳ばかりが広がる広い、部屋でふたり、強く強く、抱きしめあったまま、泣いているんだった。


  *


 それくらいの頃だったろうか。兄は非合法組織に加入、いわゆる、“グレた”のだった。母と父は兄のいないところで散々兄を罵った。その分わたしにかかる愛情は深くなってゆく一方だった。

 しかし思えばなんだ、非合法組織に加入したと言ったって、そこまで兄を追い詰めたのは誰だ。わたしたちだ。父と、母と、そして、わたし。

 わたしは知っていた。わたしという存在が、兄への圧力となっていることを。

 だってわたしは母の子。ママじゃない。いつだって、誰にだって、優しい兄だからこそ、垣間見える闇の色は、深かったように感じる。兄は、優しい。しかしその心の奥底で、きっとわたしは、疎まれている。それでもわたしはそれに気づかない、純粋な妹を演じる。いつまでも、兄の妹でいたかった。

 当時、わたし十歳、兄、十六歳である。
 

ー3→←4 逆光



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緋野こおり(プロフ) - 春光さん» コメントされるって、すごく嬉しいことです。私自身も、作品を本当に愛していて、そしてそれが、届くべき人に届いているだなんて、そんな幸福なこと、ありませんから。本当、ありがとうございます。 (2022年4月24日 14時) (レス) id: a227e14c30 (このIDを非表示/違反報告)
春光 - またもやコメント失礼します!! 話が進んでいくにつれ私の興奮が…やばいです!!!! これから応援しています。楽しみに待っております。(^o^) (2022年4月17日 20時) (レス) @page43 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)
春光 - とても面白いし読みやすくて好きです!!(なんか上から目線みたいになってすいません(╯_╰))続き楽しみです (2022年4月3日 15時) (レス) @page30 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年2月18日 22時

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