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..交流会へ向けての“しごき”で、わたしは体力がほんの少しだが伸びた。そして伏黒さんへの恋心は、(つの)ってゆくばかりだった。

「自販機もうちょい増やしてくんないかしら」

 屈んで飲料を手に取る釘崎さんが呟く。

「無理だろ、入れる業者も限られてるしな」

 そんな伏黒さんのよい声を聞き流しながら、真希さんへのスポーツドリンクのボタンをびっと押す。機器自体の反応が悪いのか、わたしの筋力不足なのか、身体を少し前のめりにすることで体重をかける。そのとき、ふっと胸を(よぎ)るものがあった。

『はやく、戻りましょう』

「なんでよ」

『今日は、高身長アイドル、高田ちゃんの個別握手会の会場が東京で』

「だからなにがって」

 釘崎さんがそこまで言って、背後に重いなにかの気配があることに気がついた。伏黒さんもばっと後ろを振り返る。

 そこには、わたしが予測した通りの人がいた。東堂さんと、真依さんが、いた。

「高田ちゃんが、なんだ」

 太く安定感のある声で東堂さんが訊く。わたしは答えずに釘崎さんたちの立つ列に少しだけ後ずさる。

「アナタたちが心配で、学長に付いて来ちゃった」

 真依さんはその端整な顔を歪めるようににたりと笑みをつくって言葉を続けた。

「同級生が死んだのでしょう?辛かった?...それとも、そうでもなかった?」

 その“同級生”と、“死んだ”という言葉に唇を噛む。ただ瞳は真依さんを据える。

「いいのよ。言いづらいことって、あるわよね。代わりに私が言ってあげる。“器”なんて聞こえはいいけど要は半分呪いの化け物でしょう?」

 わたしは唇を強く噛む。

「そんな穢らわしい人外が、隣で不躾に“呪術師”を名乗って、虫酸が走っていたのよねぇ。死んで、清々したんじゃない?」

 真依さんはそう告げてから、眉をひそめてわたしを見た。何事だと隣の二人はわたしを向く。

「唇を強く噛みすぎだ」

 伏黒さんがそう言って、わたしははっとする。口元に手を添えて見れば、鮮烈な赤がたらたらと顎までを伝っていた。

「返さなくていいから」

 伏黒さんは振り返らずに、わたしに自身のハンカチを手渡して言った。状況は最悪なのに、胸はとく、とく、と鳴っている。伏黒さんの匂いが、ハンカチを通して伝わってきていた。

 おそるおそる口元にハンカチを近づける。それは白のタオルハンカチで、汚すのがもったいなかった。
 

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緋野こおり(プロフ) - 春光さん» コメントされるって、すごく嬉しいことです。私自身も、作品を本当に愛していて、そしてそれが、届くべき人に届いているだなんて、そんな幸福なこと、ありませんから。本当、ありがとうございます。 (2022年4月24日 14時) (レス) id: a227e14c30 (このIDを非表示/違反報告)
春光 - またもやコメント失礼します!! 話が進んでいくにつれ私の興奮が…やばいです!!!! これから応援しています。楽しみに待っております。(^o^) (2022年4月17日 20時) (レス) @page43 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)
春光 - とても面白いし読みやすくて好きです!!(なんか上から目線みたいになってすいません(╯_╰))続き楽しみです (2022年4月3日 15時) (レス) @page30 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年2月18日 22時

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