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.『本当にすみませんでした』

 そう告げ頭を下げるわたしの声を最後まで聞かないで、彼女の声が重なる。

「べつにいいわよ、もう。あれはあたしにだって非があったわ。あたしこそ、ごめん」

『そんなこと、ないです。釘崎さんに非はありません。伴って、わたしは釘崎さんの言葉に、非常に深い感慨を受けました』

 釘崎さんとは、一昨日より相見(しょうけん)することがなかった。それゆえに流れる微妙なこの空気に乗っかって、わたしはぎこちなく紙袋を差し出す。

『その、お礼というか、おわびというか、ささやかですが、こんなものを』

「なに...これ、セットアップの、かわいい...!」

『はい』

 釘崎さんはこちらと手元の衣服を交互に目線で行き来し、その目は大きく見開かれている。少し経てば、その感情をゆっくりと収めてまんざらでもない、といったような表情で言った。

「いい趣味、してんじゃないの」

 そう笑う彼女は屈託なかった。それにつられてわたしもほんの少し、口の端が持ち上がる。

「あんたそれ、笑ってんの?」

『...おそらく』

「はぁ、それがだめだって言ってんのに」

『すみません』

「うぅん。いいわ。あんたはそれでいいわ」

 釘崎さんは、もう一度屈託のない笑顔をしてみせる。

「今度、ショッピングでも行きましょ」

『はい』

 今夜はいつもより、少しだけ、快く眠れる気がした。


  *


「おっ...っつー、仲直りしたのか」

 朝からパンダさんは、謎の擬音語を使って話す。それにわたしは『おはようございます』で答える。

「おめでとさんよ、そら、今日も覚悟しとけよー」

『はい』

 こころなしか、わたしのこの声はいつもよりも軽快だ。鼻で息を吐いて、前を向く。そこに広がる陸上トラックのレーンの奥には、伏黒さんの姿があった。

 わたしは思う。これは恋だろうか、いや、恋だが、それの定義はわからないけれど、これは、恋だけれど、なんだかそれを認めたくなくて、それでも、彼の姿を探してしまう自分がいて、あぁ、もう。シェイクスピアの著書である、「ヴェニスの商人」に登場する人物の言葉、「恋は盲目で、恋人たちは恋人が犯す小さな失敗が見えなくなる」というのは、本当だったのだろうか。少なくとも自分は、そうだろう。だってこんなに、頭が弱くなる。

「Aは今日も、体力強化でランニングな」

『はい』

 伏黒さんを横目に見ながら、わたしは頷いた。
 

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緋野こおり(プロフ) - 春光さん» コメントされるって、すごく嬉しいことです。私自身も、作品を本当に愛していて、そしてそれが、届くべき人に届いているだなんて、そんな幸福なこと、ありませんから。本当、ありがとうございます。 (2022年4月24日 14時) (レス) id: a227e14c30 (このIDを非表示/違反報告)
春光 - またもやコメント失礼します!! 話が進んでいくにつれ私の興奮が…やばいです!!!! これから応援しています。楽しみに待っております。(^o^) (2022年4月17日 20時) (レス) @page43 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)
春光 - とても面白いし読みやすくて好きです!!(なんか上から目線みたいになってすいません(╯_╰))続き楽しみです (2022年4月3日 15時) (レス) @page30 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年2月18日 22時

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