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.「まぁな、あれはおまえが悪い」

「そーだなー、Aにもいろいろあるんだろうがなー」

「しゃけぇ...」

 二年の三人ははっきりとそれを伝える。しかしもはや、このドライさが心地いい。変にシリアスに見られたって嬉しくない。

『わたしどうしましょう』

「ご自慢の頭脳で考えてみろよ」

 真希さんが皮肉ったらしく言う。

「Aってさ、頭いいくせにそういうの弱いよな」

『どうしましょう』

「結局素直に謝るか話すかすんのが平和だともうがな、私は」

「しゃけ」

『成程』

 そう呟いて夕空を仰ぐ。夕空と言っても日は沈みかけており、先ほどまでの赤みは失せ、厚ぼったい雲の隙間からちらちらと細かな恒星が覗く。

 そんなでか、歩幅が少し遅れ、わたしは高専生の一群の最後尾で歩いていた。少し前を歩く伏黒さんの高身長の背中を見て気づいた。

 そのとき心臓がとく、と鳴った。かすかだが、わたしは聞こえた。とく、とく、普段とは違う心音は体の中を反芻している。

 恋だ、と思った。いくつも見てきた。“恋愛小説”というものを。これはそれに該当する症状だ。それでもだがしかし、と、わたしは形のないジレンマに苛まれる。

 そして伏黒さんはこちらを振り返った。まるで、と思った。まるでこれは、恋愛小説ではないか。そんなシチュエーションを前にしても、やはりわたしは平然を保つことしかできない。

「詠見」

 彼の声が心地よい。

「あんま、気にすんなよ」

 ゆっくりと紡がれたその言葉に、とくとくと鳴っていた心臓は刻む速さを増し、いまやその鼓動を通り越して、熱を持ちはじめていた。

『...はい』

 声を出すので精一杯だった。喉がきゅう、と萎縮する。そうして縮こまるわたしたちに、真希さんが投げかける。

「おい、てめーら。いちゃついてんな早く来い」

 わたしはふたたび熱くなる心臓に手を当て、前を、伏黒さんの背中を向いて走り出す。

 “いちゃついてんな”。その言葉を反芻する。そして微笑む。そして蔑む。

 きっとこんなわたしを見ると、母は目をいっぱいに見開いて、わたしをぶつだろう。「そんなお下品なこと、はしたないのですっ!」そう、乱れた日本語で。

 わたしは母が嫌い。(ママ)が好き。父が嫌い、兄が好き。

 それでもみんな、この世界にはいない。

 みんな、とっくに、死んでしまったから。
 

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緋野こおり(プロフ) - 春光さん» コメントされるって、すごく嬉しいことです。私自身も、作品を本当に愛していて、そしてそれが、届くべき人に届いているだなんて、そんな幸福なこと、ありませんから。本当、ありがとうございます。 (2022年4月24日 14時) (レス) id: a227e14c30 (このIDを非表示/違反報告)
春光 - またもやコメント失礼します!! 話が進んでいくにつれ私の興奮が…やばいです!!!! これから応援しています。楽しみに待っております。(^o^) (2022年4月17日 20時) (レス) @page43 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)
春光 - とても面白いし読みやすくて好きです!!(なんか上から目線みたいになってすいません(╯_╰))続き楽しみです (2022年4月3日 15時) (レス) @page30 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年2月18日 22時

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