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.「これからどっか行くんですか」
そう、伏黒さんが言うと、五条先生はふっふっふ、と笑みを浮かべて口を開く。
「せっかく一年四人が揃ったんだ。行くでしょ、東京観光」
瞬間、虎杖さんと釘崎さんはぱぁぁっと表情をほころばせて仔犬の愛情表現の如く、ぴょんぴょんした。横浜とは東京だという謎理論も展開されているが、伏黒さんはつっこむ暇も体力もないというように、いぶかし気な表情で黙っていた。
「それでは、行き先を発表します」
「六・本・木」
「ろっ、ぽん、ぎぃ!?」
五条先生の言葉に嬉しそうに反応するふたり。しかしあまり期待はしないほうがいいと思う。六本木は“遊び”が前面に出た、華やかな場所だ。その分棲みつく呪いは黒いものだろう。
きゅんきゅんと目を輝かせる彼らを横目に、五条先生は歩み始めた。
*
「ここはまだ六本木ではないわ」
「だよな、そうだよな!なっ詠見さん!」
虎杖さんが懇願するように目で訴えてくる。仄暗く薄気味悪いこの場所を、六本木だと思いたくないのらしい。わたしは息を吸って真実を告げようとするが、それを釘崎さんの声が遮る。
「なんであたしは釘崎なのに、この人は“詠見さん”なのよ!」
「いや聞く!?それ、聞くぅ!?」
虎杖さんはいつものオーバーリアクションでのけぞる。それでもたしかに、わたしは“さん”付けで呼ばれている。
「なんつーかなぁ、俺とは次元が違うっていうか、近寄りがたい、とはまた違うんだけど...」
「あーそれわかるわ。なんか、才女っぽい」
「おまえら、やめろよ」
伏黒さんが制してこの会話は終了した。さっぱりと言って斬って捨てるような釘崎さんは、付き合いやすそうだな、と思った。別に何ともないことだけれど、胸が少し痛かった。
*
「やっぱり俺、行きますよ」
わたしたちは、ビルに付属するらせん階段に座ってそんな会話をする。伏黒さんの言葉に、五条先生が答える。
「いいの。大丈夫だから」
「でも、虎杖は要監視でしょ」
「まぁね。じゃあAはどう思う?」
『...虎杖さん、というより、釘崎さんのほうではないのでしょうか』
「というと?」
『虎杖さんは、宿儺の指をのみました。呪いと彼とは、何かが絡まっている気がします。宿儺の指、以前に』
「どういうことだ」
『なんていうかもっと、深くで呪術とつながっている、というような...』
言うと五条先生は、「ふぅん」と不敵に澄ました。
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緋野こおり(プロフ) - 春光さん» コメントされるって、すごく嬉しいことです。私自身も、作品を本当に愛していて、そしてそれが、届くべき人に届いているだなんて、そんな幸福なこと、ありませんから。本当、ありがとうございます。 (2022年4月24日 14時) (レス) id: a227e14c30 (このIDを非表示/違反報告)
春光 - またもやコメント失礼します!! 話が進んでいくにつれ私の興奮が…やばいです!!!! これから応援しています。楽しみに待っております。(^o^) (2022年4月17日 20時) (レス) @page43 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)
春光 - とても面白いし読みやすくて好きです!!(なんか上から目線みたいになってすいません(╯_╰))続き楽しみです (2022年4月3日 15時) (レス) @page30 id: 51abf968eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うずのしゅげ x他1人 | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7
作成日時:2022年2月18日 22時