本当の仲間は知っている

溶ける氷 ページ25

数分間、ずっとほのみちゃんの腕の中で泣いた。

その時、いろんなことを考えたんだ。




黒沢さんから受けた痛み。

KZから裏切られた苦しみ。

フレンドから貰った幸せ。



全部が私の脳裏に染み込む。


それは良い意味でも悪い意味でも、私の心に変化をもたらした。





私の今やっていることは正しいことなのか。

気付かないだけで、間違いを犯しているのでは。


いや、でも、一番間違えているのはKZだ。



それ以外の誰でもない。



だから、私が正しいんだ。




そんなことを考えては泣いていた。

よく分からない感情が私の涙を溢れさせる。








それが止まることはなくて、ついに私は顔をあげた。

「ほのみちゃん、ありがとう。
　もう大丈夫。」



すると、ほのみちゃんは今にも泣きそうな顔をしたんだ。

「嘘付かないで。
　まだ全然泣いてる。
　
　それくらい、悲しいことがあったんだよね。」



なんで、ほのみちゃんがそんな顔をするの。

今日会ったばかりの私に。





ほのみちゃんは優しく微笑む。


「ありがとう、あなたの過去を話してくれて。
　私も言わないと対等じゃないよね。


　だから、私も私の過去を話すよ。
　
　そのために来たんでしょう、立花彩さん。」




私はハッと本来の目的を思い出し、頷いた。




「うん、そうなの。
　私と同じような目に遭った人を救いたくって。」


「そっか、優しいんだね。
　でも、さっきここに来た人も、同じようなこと言ってたなぁ。

　立花彩さんもあの人と同じなら、私の過去は話せないけど？」




ほのみちゃんの言葉に高速で首を横に振る。

「あんな人と私は違う！！」



ほのみちゃんはクスッと笑い、言った。

「分かってるよ、そんなこと。
　それにしても、さっき来た黒髪の人と知り合いなの？」



私は沈黙し、俯く。


あんまり……言いたくないな。

もう思い出したくない過去だもの。




私が答えずにいると、ほのみちゃんは話し始めた。


「言わなくて良いよ。
　無理に言わせようとしてるわけじゃないから。



　えっと、じゃあ……私の過去について話そうかな。

　元気なのに、どうしてこんなところにいるのか。」





私は顔をあげ、下を見つめるほのみちゃんを真っ直ぐと見る。



僅かに開いているカーテンから漏れ出す光が、ほのみちゃんを照らしていた。

悲しげな表情のほのみちゃんは、とても美しく輝く。




それはまるで天使のように。

けれど、寂しそうな天使だった。

ほのみの過去　→←立場逆転　

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