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系さんについて行って、到着したのは解剖室。
解剖の手伝い?と思ったが、スクラブも付けずに中に入っていく彼を見て違うことはすぐ分かった。
じゃあ何をしに?
解剖台に寄り掛かる系さんは黙ったまま。何かを考えているのか動く口元を見つめていた。
「…………A」
「はい?」
「っ、あー……その、なんだ、」
いまいち歯切れの悪い言葉に首を傾げて続きを待った。やがて決心したような真剣な顔に変わると、彼は言った。
「お前が、好きだ」
「……………………う、そだ」
彼の言葉が、状況がうまく飲み込めなくて長い沈黙の後に出てきたのは、それだった。しかし、「嘘なんかじゃねぇ」とまっすぐ目を見て言ってくるから、いろんな言いたいことが混ざって、気づけば頬が冷たかった。慌てたように涙を拭ってくれたが、その顔は悲しそうで、誤解させてしまったことにすぐ気づいた。
「…………嫌なら振ってい、」
「嫌じゃないッ…!」
「…は?」
状況が読み込めていない系さんの目を見て、今度はちゃんと気持ちも伝えるんだ、と再度言った。
「嫌なんかじゃない………私も好きです、貴方のこと」
微かに震える唇から出た言葉も震えていて、伝わったかどうか分からない。目を見開いた後で俯き、目を覆った彼の表情は読み取れなかったから。暫くして彼が連ねる問いに、私は答えた。
「……だいぶ年上だが、良いのか?」
「はい、勿論」
「迷惑かけるんじゃ、」
「お互い様です」
「…………本当に、俺でいいのか?」
「系さんが、良いんです」
自然と緩んだ口元そのままにそう言えば「そうか…」と呟き、ぐいっと引っ張られて抱きしめられた。力強い腕の力に、優しさを感じた。
___やっぱりこの人は、どうしようもなく優しい
そっと腕を背中に回せば、腕の力は強くなった。微かに震える体に、彼も不安で緊張していたんだと気づいた。時間にして何分も経っていないだろうが、何時間にも感じた。
「A」
「はい、んッ……!?」
「……はっ、間抜けな顔」
「っ……不意打ちするからです」
そう言って見つめ合い、笑った。戻りましょう、と解剖室から出ようとしたらミコトさん達が隠れていた。見られていたことに気がつき、系さんを見ればクツクツと笑っていて、気がついていて言わなかったのか、と羞恥で顔を覆った。
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月影(プロフ) - たこさん» ありがとうございます!再更新に向けて頑張ります! (2018年8月16日 22時) (レス) id: 23e17ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
たこ - とても楽しく読ませてもらいました!私もアンナチュラル好きだったので、この小説を見つけられてとても嬉しいです!続きがとても気になるので、再更新待ってます!がんばってください!長文失礼しました。 (2018年8月15日 22時) (レス) id: ca9d716e46 (このIDを非表示/違反報告)
月影(プロフ) - はらさん» ご指摘ありがとうございます!!!忘れてしまうので指摘してくれる方がいるのとても嬉しいです! (2018年5月10日 18時) (レス) id: 831fe892d1 (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグ外し忘れていますよー違反行為なのでちゃんと外して下さいねー (2018年5月10日 17時) (レス) id: 9f3c62d37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トマトご飯 | 作成日時:2018年5月10日 16時