相対する世界に飛び込んだようだ。 (ページ27)

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コソコソと楽しそうに私の陰口を言っていた彼女らの前に立つ。私の姿を視認して、マスカラが塗られた目を大きく開いた。その顔は段々と青くなっていたが、私はまだ何も言っていない。

「ハッピーハロウィン、お嬢様方。何やら私の話をしてくれているようで……どうかなさいました？」
「あ、いや、そ、の、」
「ああ！もしかして何かこちらに不手際でも？それともご不満がお有りですか？私共リクルーターは、貴方達に楽しんでもらわなければならないのです。よろしければ教えてくれませんか？貴方達が、私を見て、何を、言っていたのか」

そういって笑みを深めると、青くなっていた顔を更に青くした。もはや白と言ってもいい。震える声で「すみ、ません、でした…」と言う彼女達に、貼り付けていた笑顔を消し去る。ヒッと悲鳴をあげかけたのを制して1つ忠告する。

「我々だって大なり小なり感情はあります。どうか金輪際あのようなことを口に致しませんようお願い致します」

恭しく胸に手を当てて礼をする。頭を上げて笑えば、蒼白な顔を見合わせて颯爽と去っていった。
うん、それもどうかと思うな。
やれやれと待ってくれているミスターの元へ向かおうと踵を返すが、

「何やってるんですかエイトフットさん」

いつのまにか真後ろに立っていたエイトフットに危うくぶつかりかけた。邪魔なんですけどの意を込めて顔を見れば、彼にしては珍しく困惑したような表情をしていた。

「お前…さっきの無意識か？」
「は？」
「いや、なんつーか……」

何やら言い淀む彼に首を傾げると、先を行っていたスキャターが「お二人共！帰りますよー！」と叫んだ。眉間に皺を寄せる彼を他所に「今行きますよ！」と返す。

「ほら、置いていきますよ」
「あァーーーー……今行く」

ガシガシと頭をかいたと思ったら長い足を気だるげに動かした彼の背中を、急いでくださいと押して歩いた。

(……少し気をつけて見ていた方がいいかもしれないねぇ)

目を細めて私を見ていたミスターには気づかなかった。