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(やっと言いに来たかぁ)
日高はAの話を頭に耳に入れながら、実はそんなことを思っていた。裏腹に、悩ましい顔で目の前に座る彼女に、ついこちらまで表情が固くなってしまう。
自分が変にかしこまったせいで、『ミヅキは勉強が好きだからね、きっと進学したいだろうなぁと思っていたよ』なんて、サラッと口に出来る空気でもなくなってしまった。
「BE:FIRSTの活動があるので、とても難しいお願いをしているのはわかってるんです。……でもどうしても、」
膝の上で握られた手に更に力を込めているのが分かった。日高の中である程度受け入れる心積りではあるが、Aが勇気を出そうとしているのを邪魔してはいけないな。という無意識のストッパーが働いて、静かに次の言葉を待った。
「、勉強がしたいんです。
もっと、沢山、……自分に力をつけるために」
「……ミヅキにとってそれは、今じゃなきゃだめなんだね?」
「はい」
日高は自分の事務所の所属アーティストと話すとき、……こと、真面目な話をするとき。必ずその瞳を注意深く観察するようにしている。
言葉に嘘がないか、迷いがないか、瞳は人の心理を映し出す。
なにより更にその奥に“覚悟”が宿っているのかどうか、彼は自分の経験則から常にそれを推測っていた。
(この子は本当に、)
静かな炎が燃える瞳。
AがBE:FIRSTになろうとする少し前から感じていたものは、ここ数週間で更に大きくなったように思う。
「今勉強がしたい」だから『活動と両立させる』
Aはその覚悟を持って日高の前にいる事は、もうよく分かっている。
さて、それなら。
「僕は、今後5年のBE:FIRSTの活動に、一切の妥協をするつもりはない。明確にどんな事をしていくかは、前に話した通り」
「はい」
「妥協しない活動の傍で、君は少なくとも4年は学業を両立させていくことになる。」
「はい」
「しっかりと、やれるんだね?」
「やります」
「……一つだけ。僕から言っておくことがある」
Aは自分の決意に嘘をつかないことを、日高はよく知っている。彼女はこうと決めたら最大限に努力して結果を残す人材だ。
だから、彼女にはここで、しっかりとしたゴールを定めてもらう必要がある。
「デビュー5年目は一つの集大成になる。
最後の一年は全力で、BE:FIRSTに捧げてほしい」
彼女の覚悟に対して大きな信頼を寄せる日高が言う。5年目の春には学生という身分を卒業して、全てを一つの道にそそがなくてはいけない。
彼が口にした言葉の意味を、Aはしかと受け取り頷いた。
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白(プロフ) - ゆきさん» わーっ、嬉しい🥰 特別な立ち位置にいるシュントくんがこれからどんな活躍をするのか…他のメンバーがどのように食い込んでくるのか、楽しみにしていただければと思います。 (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 珠菜さん» まとめて更新するとなかなか早いですね笑 今後はどんどん不定期になっていきそうな予感です…次回もお楽しみに! (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 新しく更新してもらえるたびに、テンション上がってしまいます!!更新チェックが最近の毎日の日課にっています(笑)今回のシーズンは改めてシュントの関係が今まで以上に主人公にとって大きいものだなぁと感じてドキドキもしてます (2023年4月7日 12時) (レス) @page50 id: f1ac1c79d7 (このIDを非表示/違反報告)
珠菜(プロフ) - もう続編なんですね!!早い!!リルティングの方とはまた違った楽しみができて嬉しいです🥰次も楽しみにしてます!! (2023年4月6日 19時) (レス) @page49 id: 93515d92f9 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - そうまなさん» ありがとうございます!時期的にはまーぜるくん達はまだまだ先になりますが…いずれ😳 リルティングアワーのほうが先に登場するかもです(小声) (2023年4月6日 18時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年3月21日 18時