ミュージックアワー【BE:FIRST】

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「“会うべきか”って、なんやねん」

「“パパはお星さまになった”って聞いててんで。

　いないもんにされてた人がいきなり出てきて、こっちからしたらドッキリかけられてるようなもんやし

　真面目に考えるのとか難しい」




いっそ冗談であってくれと思うくらいに現実味がない。
生きてるのか死んでるのか、日本人なのか、ちゃんと仕事をしてる人なのか、どこに住んでるのか。生まれてから今まで一度だって教えてもらった事はなかった。

別に私もそれで良いと思ってたし、“お星さまになった”の意味がどんなものかわかる頃、もう父はこの世にいない人なんだと納得していたのに。




「真面目に考えんでもいいんやで」

「……」

「そんなん、一発顔見て、自分とどこが似てんのか探して、向こうが詫びの気持ちにお金でも渡してきようもんなら受け取ったらええやん」

「……絶対イヤや、そんなん」

「ふっ。あんたは嫌がるやろな」




その瞬間、テレビの向こうで歓声が上がる。パッと視線をやったら、阪神が追加点を入れられてピッチャーの苦々しい顔が映っているところだった。

「オーイッ！」野太い怒号。今のはテレビからではなく、箸を咥えた叔母さんから。


なんとなく話を続ける空気ではなくなって、しばらくの間私は無心でお好み焼きを口に運びながら、阪神に文句を言い続ける叔母さんを観察していた。




そうして3人のお箸が机に置かれる頃、叔母さんはおもむろにこちらを向いて。




「……あんたが立派になってよかったわ」




突拍子もなくそんな事を言う。




「？」

「あの男は、生まれたばっかの赤ん坊と、ねーちゃんと海星置いてある日突然いなくなってそれっきり。
そのあとアンタらがした苦労を思えば、ほんまに、5・6発殴るだけじゃきかんくらい。

　……ほんでも、殴ったところで響きもしないやつもおるからな。ねーちゃんと海星がのうなった時にだって一言も寄越さんかったような、平気な顔して現実から逃げてきたような人間が、

　今さら何やねんってアタシだってそう思うよ」




叔母さんは鋭い眼差しのままで私をずっと見て、淡々と言葉を続ける。




「真剣に向き合ってやる必要はない。今の立派になったあんたの姿を見せつけてやったらええねん。お前なんておらんくてもAは日本が世界に誇れるオンナになりましたってかましたりたいわ」

「…………“世界に誇れる”は気ぃ早すぎやねんけど。

　その言い方やと叔母さんが私を育てたみたいやん」




叔母さんは呆れたようにハッと鼻を鳴らす。「何言うてんの。アンタのセリフに決まってるやん」と、机に手のひらを置いた。




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