6-3 ページ39
.
中学に上がる前の頃、予防接種か何かで母子手帳を見る機会があった。あのときに見た私の名前は確か……“野替A”…………ぼんやりと、(私って苗字変わってたんだなぁ)って思ったっけ。
「……確かに。本物そうですね、それ」
「名前だけでは確実とは言えないけれど、」
「珍しい苗字ですもん。少なくとも関係はあると思います」
「……そうだね」
偽物が騙っていたとしても、少なくとも私の身内に関わる人。断言する私に、日高さんは組んでいた指を摩りながら静かに肯定した。
「それで、その人、うちに連絡してきてどうしたんですか?」
自分が今どんな感情かも分からないまま、日高さんの手元を見つめて問いかけた。
「……ミヅキに会いたいと言っている」
「…………、」
まあ、わざわざ連絡してくるんだから、そういう事だよなぁ。と
予想に易い展開に心の中で納得する。
そんな自分と裏腹に、事態をちゃんと飲み込めていないような感覚もしていて。
「…………」
「……もちろん、今すぐにとは言わない。会えと強制するわけでもない。ミヅキはどうしたいかなと、今日はただそれを聞きたいだけなんだ」
そんな風に聞かれても
「…………どうしたら良いかわかりません」
幼い頃から一度だって、父親という存在を知らないで来た。
夢想の中にある父を求めた日も、一人ぼっちになったあの日も、現れてはくれなかったのに。
(いまさら、)
会ってどうしたいと言うのだろう。
向こうはどんな事を考えて、今更私の顔を見たいと思っているのだろう。
少なくとも私にとって、父親と会いたいのは今じゃなかった。
「そうだよね。いきなりどうしたい?なんて決められないと思う」
「……すみません………」
「、相手方がどんな人かも把握できていないからね。いきなり君に会わせるのも正直怖いと思っていたんだ。
……だからもしミヅキが良いと言うなら、先に俺だけでも先方と話すってことも出来るよ」
本当に気遣うような言葉を選んでいる日高さん。
なんか申し訳ないなぁと思いつつ、きっと彼にこの気持ちは一生共有できないものなんだろうなとも考えてしまう。
(相手がどんなつもりでも、会う事自体に意味を感じないって言ったら……日高さんどんな顔をするんだろう)
警戒していても、日高さんがわざわざこの事を話してきたって事は、私にとって親という存在が特別なものだと思っているからなのかな。
.
178人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白(プロフ) - ゆきさん» わーっ、嬉しい🥰 特別な立ち位置にいるシュントくんがこれからどんな活躍をするのか…他のメンバーがどのように食い込んでくるのか、楽しみにしていただければと思います。 (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 珠菜さん» まとめて更新するとなかなか早いですね笑 今後はどんどん不定期になっていきそうな予感です…次回もお楽しみに! (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 新しく更新してもらえるたびに、テンション上がってしまいます!!更新チェックが最近の毎日の日課にっています(笑)今回のシーズンは改めてシュントの関係が今まで以上に主人公にとって大きいものだなぁと感じてドキドキもしてます (2023年4月7日 12時) (レス) @page50 id: f1ac1c79d7 (このIDを非表示/違反報告)
珠菜(プロフ) - もう続編なんですね!!早い!!リルティングの方とはまた違った楽しみができて嬉しいです🥰次も楽しみにしてます!! (2023年4月6日 19時) (レス) @page49 id: 93515d92f9 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - そうまなさん» ありがとうございます!時期的にはまーぜるくん達はまだまだ先になりますが…いずれ😳 リルティングアワーのほうが先に登場するかもです(小声) (2023年4月6日 18時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白 | 作成日時:2023年3月21日 18時