ミュージックアワー【BE:FIRST】

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『明日の朝に時間もらえる？』と日高さんに言われたのは、MTVの本番が終わって舜斗と楽屋を出ようとしている時だった。

仕事の前に時間が欲しいとのことで、一夜明けてだいぶ早い時間に、私は事務所の一階にいる。





(何の用やろー)




「悪いね」

「いえ全然」

「昨日は眠れた？」

「わりとぐっすりと」




ラフな格好で出迎えて、私を椅子に促しながらいつもの調子の日高さん。……いや、最近彼はことさら忙しそうで少し顔色は悪い。




「流石だね。レオは興奮して眠れないって連絡して来たよ」

「グループLINEも朝方まで動いてました」




SUPER SONIC以来の大きな会場でのライブで、上手くクールダウンできなかったメンバーが数名ほど。妙なテンションで会話を続けていたようで、朝起きたら通知が3桁溜まっていた。


日高さんは「ミヅキも鉄人だね」と笑う。
鉄人というと、マナトくんもすぐに寝たんだろうか。そういえば昨夜の会話には彼もほとんど参加していなかった。




「さてと、今日はちょっと真剣な話なんだ」




日高さんが私を呼び出す時はわりといつも真剣な話だけどなぁ。と、含みを持たせた彼を見て思う。

だけども次に出てきた言葉は予想だにしない、
冗談みたいな“ 真剣なこと ”だったのだ。




「ちょっと驚くかもしれないけど。この前ね、


……君のお父さんだっていう人から連絡があったんだ」

「……………………、おー……」

「…………、その反応は意外だな」




そういう話題だったのかと思ってみると どことなく気まずそうな日高さんを前に、何とも間抜けな声が出る。

だってなんか、そっか……




「、生きてたんだと思って」

「…………」

「その人が本物だったら、の話ですけど」




驚くくらい無機質な自分の声。なのに日高さんに向けては冗談めいた事を言うみたいに笑顔を作って、きっと今の私はとても不自然で。




「この先を1人で聞くのは辛いかい？」




そうやって、気を遣う言葉に首を横に振る。




「大丈夫です。……そう聞くってことは、本物なんですね」

「……ミヅキのお祖母さんに確認したから、ほとんど間違いないだろうと思ってる」




“芸能人になったら親戚が100人増える”とか聞いたし、同じような経験が夏休み明けにあったからと、どこかタカを括っていた。

しかし日高さんの言葉にそれが脆くも崩れ去って。




「…………野替さん。

君の“お父さん”を名乗る方のお名前だよ」




どこか昔に聞いたことがあるような響きが、私の頭を強く殴っているようだった。



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