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日高さんが持ち込んだギターは、正直彼が事務所用に新しく買ったドラムよりも興味をそそられるものだった。
元々ミヤビさんにベースを習っていたのもあって、どうしても弦楽器に目がいってしまう。
「─── 心臓から あふれ出した声で
歌うメロディ 振り向いた未来
君から あふれ出した声と
合わさって響いた 群青の空の下」
触りたてのギターで何を練習しようかなと悩んでいた頃、スタッフさんが『これ聴くとミヅキが思い浮かぶ』って話していた曲。
そこから難易度もよくわからないまま夢中でコードを鳴らして、今では原曲とほぼ変わらないテンポで弾けるようになった。
「奇跡じゃなくていい 美しくなくていい
生きがいってやつが光輝くから
切れないバッテリー 魂の限り
宿命ってやつを燃やして 暴れ出すだけなんだ
ただ宿命ってやつを かざして
立ち向かうだけなんだ」
本日何度目かわからない歌い締め。
左指先が少しヒリヒリ痺れてきたのを、弦から離して息をついた。
「…………?」
ふと視線を感じて振り返る。
自分がきっちり閉めたはずの扉がわずかに開いていて、4つの瞳と目が合った。
「ひっ?!」
恐怖映像に思わず短い悲鳴が口から鳴る。「あ、ほら気づいたっ」って子供みたいなテンションなのは、日高さんの声だ。
「えっちょっと日高さん……覗き……!」
「やっと気付いたね。おはよう」
「お、おはようございます?!」
動揺する私をよそに嘘みたいにいつも通りな日高さんが、大きく扉を開けて部屋に入ってきた。ギターのコソ練を覗かれていた事ともう一つ、私を動揺させたのには理由があって。
「こんにちは……」
日高さんと一緒に部屋に入ってきた男の子。見知らぬ顔に心の中で首を傾げる。
遠慮がちに挨拶をされて変な戸惑いを隠せないまま「こ、こんにちは!」と声が裏返った。
「ミヅキ覚えてない?3次審査にいた、内野創太くん」
「え……?、っと……」
「流石に覚えてないかぁ……違うチームだったしねぇ」
「いや。えっと、チームCだった方」
「おおっ、流石の記憶力」
声で感心する日高さんと、表情から驚いている内野創太さん……くん、でいいのかな。この場合。
すぐに気がつけなかったのは……そう。雰囲気がずいぶん変わられたようで。
「……いくつでしたっけ?」
「中3す。」
「リュウヘイとおないだ」
育ち盛りだねえって、世間的にはまだ成長過程にある私が思うのも変な話なんだろうけど。会うたびに雰囲気が変わる年頃、っていうのはルイとか見てても思う事。
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白(プロフ) - ゆきさん» わーっ、嬉しい🥰 特別な立ち位置にいるシュントくんがこれからどんな活躍をするのか…他のメンバーがどのように食い込んでくるのか、楽しみにしていただければと思います。 (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 珠菜さん» まとめて更新するとなかなか早いですね笑 今後はどんどん不定期になっていきそうな予感です…次回もお楽しみに! (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 新しく更新してもらえるたびに、テンション上がってしまいます!!更新チェックが最近の毎日の日課にっています(笑)今回のシーズンは改めてシュントの関係が今まで以上に主人公にとって大きいものだなぁと感じてドキドキもしてます (2023年4月7日 12時) (レス) @page50 id: f1ac1c79d7 (このIDを非表示/違反報告)
珠菜(プロフ) - もう続編なんですね!!早い!!リルティングの方とはまた違った楽しみができて嬉しいです🥰次も楽しみにしてます!! (2023年4月6日 19時) (レス) @page49 id: 93515d92f9 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - そうまなさん» ありがとうございます!時期的にはまーぜるくん達はまだまだ先になりますが…いずれ😳 リルティングアワーのほうが先に登場するかもです(小声) (2023年4月6日 18時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年3月21日 18時