ミュージックアワー【BE:FIRST】

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時間も時間だし彼も相当眠いんだなぁ。と思っていれば、舜斗も同じ事を考えていたようで。




「……そろそろ寝るか」




マグカップを3つ集めて立ち上がる。「ありがとう、」と言うと「ごちそうさま」と返ってきた。




「リュウ、寝よ」

「うん」

「明日9時ね。起こそうか？」

「……うん。起こしてほしい」

「わかった」




舜斗がキッチンで洗い物をしている間に、リュウヘイへ中腰で話しかけると、目を擦りながらヌッと立ち上がる。あっという間に視線が上を向いて、首が攣りそうになって咄嗟にうなじに手を当てた。




「いてっ」

「……？どうしたの？」

「っ、リュウ大きいから首痛めそう」

「……ふふっ。ミヅキちゃん小っちゃいもんね」




“ちっちゃい”なんて、もう殆ど言われた記憶がない。
自分で言うのもなんだけど、168cmは女子で言うとかなり大きい方なんだけどなぁ。

口を窄めて笑いながら、リュウヘイが私の顎の辺りをこしょこしょ触る。なんっ、やめてよ、くすぐったい。




「……かわいい……」




何が良いのか、うっとりした目でそんな台詞を言われるから、まあ普通の子なら勘違いしそうなところ。でも悲しいかな。オーディション中から度々ある言動から察するに、リュウヘイは私のことを“猫”かなんかと思っている節がある。




「……ねえ、その、たまに言うそれ。やめてよ普通に照れる」

「うーん、照れてる所もすごく可愛いからなぁ」

「っ、リュウヘイッ……！！」

「ふふふっ」




パシッと思わず手が出た。肩の辺りを叩くと「いてっ」と全然感じてなさそうな揶揄い声。




「リュウ、その辺にしとけよ。みづが逆上(のぼ)せる」




いつの間にか片付け終わっていたのか、舜斗がリビングに戻ってきていた。テーブルの上にあるスマホを拾い上げながら、私達の方をチラリと見た。




「…………年下相手に雑魚かお前」

「言葉選びやホンマに」




この口の悪さはどうにかするべきである。
真っ赤になった私の顔を嘲笑するのはまだ分かる。自分でもこんなすぐ顔に出て情けないと思っていたところなのだ。

でも“雑魚”は無かろう。
年下だろうが、相手はあのリュウヘイぞ？
こちとら何を食らったとしても“こうかはばつぐんだ！”




「私が水で、リュウが草なら、舜斗が炎だもん」

「………」




突然何の話だ？という彼の怪訝そうな顔。「舜斗はミヅキちゃんに弱いって事だね！」とリュウヘイが言う。そうなんだけど、今それ言ったら……




「はっ？！弱くねーし！ワンパンだわ！」




ほら始まった。喧嘩だ喧嘩。
まあ、ゴングを鳴らしたのは私なんだけどね。



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