3-1 SUPER SONIC ページ21
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9月18日早朝。移動車の窓の外に大きなスタジアムの外観が見えてきて「おーっ」と声が出る。隣のリュウヘイがグッと体を寄せて来て、
「マリンスタジアム来るのはじめて」
「リュウも?わたしもー」
「おっきーい」
「んねぇ」
コソコソ話をするように顔を見合わせる。
デビューが決まってから初めて立つ大きな舞台。みんなそれぞれ思うところがあるのか、バスの中には妙な緊張感が漂っていた。
「もう着くから準備してくださーい」
マネージャーさんが前方席の方から声をかけてくる。
その言葉にふと思い立ち、背もたれの上から後ろの席へ身を乗り出すように振り返って、寝ている舜斗の肩にトントンと指を置いた。
「舜斗、もうつくって。起きて」
「…………ん。」
小さく声を出した舜斗は、昨夜“緊張して寝れない”とか言って遅くまでリビングにいた。私は先に寝たのだが、リュウヘイに聞くところによると2時近くまでスマホをいじっていたらしい。
「すごい度胸だなぁ、シュント」
そんな様子を知らないレオくんは舜斗をチラリと見て呟く。そういえば同じようなことを、前に私も舜斗に対して思ったことがある気がする。
あれはオーディションの合宿が始まるときだったかな……
ガタンッ
「わっ、」
「おおっ?!」
突然車体が大きく横に揺れて、座席の上に膝立ちしていた私はバランスを崩した。リュウヘイが慌てて身体を支えてくれようとするのと、舜斗の目が開いて腕が伸びてくるのがほとんど同時で。
「…………ぶつけてないか?」
直前までグッタリと寝ていたのが嘘かのように、ハッキリとした声の舜斗は、窓ガラスと私の身体の間に腕を滑り込ませていた。
おかげで頭をぶつけなかったというか、彼の腕にしがみついてバランスを持ち直すことが出来た。
「う、うん」
「ちゃんと座れ」
「うん。ありがとう」
ストンっと腰を下ろしたら、後ろから「んん〜っ」と 伸びをするような声が聞こえてくる。
運転席の方から「すみません、舗装工事やってて道が悪くて…」と言っているのも聞こえた。
「ミヅキちゃん」
「ん?」
「こんな時に言うのもアレなんだけど、牛乳冷蔵庫にしまい忘れたかも……」
「…………まじで?」
「おーい、やってんなリュウヘイ。またかよ」
本当にこんなときに何?という内容のカミングアウトに背筋が凍る。真夏の家に放置された牛乳パックを思うとおぞましい。舜斗のガヤもあって、リュウヘイは心から申し訳なさそうな顔をしていた。
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白(プロフ) - ゆきさん» わーっ、嬉しい🥰 特別な立ち位置にいるシュントくんがこれからどんな活躍をするのか…他のメンバーがどのように食い込んでくるのか、楽しみにしていただければと思います。 (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 珠菜さん» まとめて更新するとなかなか早いですね笑 今後はどんどん不定期になっていきそうな予感です…次回もお楽しみに! (2023年4月7日 23時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 新しく更新してもらえるたびに、テンション上がってしまいます!!更新チェックが最近の毎日の日課にっています(笑)今回のシーズンは改めてシュントの関係が今まで以上に主人公にとって大きいものだなぁと感じてドキドキもしてます (2023年4月7日 12時) (レス) @page50 id: f1ac1c79d7 (このIDを非表示/違反報告)
珠菜(プロフ) - もう続編なんですね!!早い!!リルティングの方とはまた違った楽しみができて嬉しいです🥰次も楽しみにしてます!! (2023年4月6日 19時) (レス) @page49 id: 93515d92f9 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - そうまなさん» ありがとうございます!時期的にはまーぜるくん達はまだまだ先になりますが…いずれ😳 リルティングアワーのほうが先に登場するかもです(小声) (2023年4月6日 18時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2023年3月21日 18時