ミュージックアワー【BE:FIRST】

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「オーキャンどんくらい行ったの？」

「関西のところは去年何個か行ったけど、東京の大学は今回が初めて。進学どうしようか迷ってたし」

「まあミヅキが大学行きたがってるとか、初耳だったしね。まさかと思った」

「おかげで志望校選びも振り出し。もう間に合わんとこもあるし」

「で、初っ端でH大ね。やっぱ頭いいんだ」

「……元々うちの家計で大学行くなら国公立やったから、そこは多少気合い入れて頑張ってる」

「それで本当に頑張れて結果出せるのが凄いよ」




ご飯を食べ終えて、食休めにサービスの黒豆茶を飲みながら一息付いている。話題は大学の話に戻っていた。




「はぁ……でもほんまにH大受けるかは考えな……」

「厳しそう？」

「偏差値的には問題ないけど、日高さんに釘刺されてる」

「……なに？」

「私らの5年構想の話。日高さんが『5年目はBE:FIRSTの活動に全力を捧げて欲しい』って」




数日前。

私の不安をよそに、日高さんは思ったよりあっさりと大学進学を良しとしてくれた。それだけじゃなく志望学部がある大学の受験日程を調べ、その場でジュノンくんに連絡を入れてオープンキャンパスに付き添うよう話をつけたくらい。
なんというか、“ノリノリだった”のだ。

しかしそれと同時に彼からキッパリと告げられた、
BE:FIRSTの活動に一切の妥協をしないという話。

会社としての第一優先は個人の学業ではなく、グループとしての音楽活動である。それはそうだろう。練習生なら話は違うが、私はBE:FIRSTだ。

このグループを取り巻く誰もが、音楽を主軸とした道筋に人生を賭けているのだから。




「つまりは今進学するなら、現役合格して、ストレートで卒業しろよって事なんだよなぁ」

「結構プレッシャーかけられてんね」

「……少しレベル下げて安牌狙うか。そもそもまだH大しか見てないし」

「次のオーキャンいつなの？」

「来週末にT大で、来月K女大とG女大いけたらって思ってる」




そういうと、ジュノンくんは手に握っていたスマホのカレンダーアプリを開いて「土曜？日曜？」と聞いてくる。




「土曜。……まさか一緒に来てくれるん？」

「だってお前、1人で乗り換えできないじゃん」




で、出来るもん！と声を上げそうになって、咄嗟に口を噤んだ。代わりにジュノンくんが土曜日の予定に『怪物』と入力したのを見て「ちょっと！」と手が出る。




「せめて“ミヅキとデート”って書いてくれてもええねんで」

「100歩譲っても子守り」




バッサリと切り捨てたその口ぶりから、“調子に乗るな”と言われている気がした。



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