ミュージックアワー【BE:FIRST】

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トレーニングマシンが揃っている体育館や、広々とした学生ホールを見て回って、食堂を吹き抜けの２階から見下ろした。

最後にこのキャンパスの目玉であるタワーの２6階から都心を眺望して。




「どうだった？」

「大学ってすごい。って事で頭いっぱい」

「そ。満足した？」

「うんっ」




雲ひとつない青空の下に、東京タワーやビル群を映し出す。視線を巡らせれば遠くの方に、私達の聖地と呼べる富士山も確認できた。

自分が知っている“学校像”からはるかに上をいく充実した施設を目の当たりにして、本来の目的とはまた違った方向の期待も膨らんできた。




「…………お腹すいたね」

「じゃあ、飯食いにいくか」

「何食べる？」

「飯田橋駅の近くに良さげなハンバーグ屋あったけど」

「えっ、あり！行きたいっ」




“ハンバーグ”という言葉に思わず身体が小さく跳ねた。ポケットからスマホを取り出したジュノンくんは、飲食の口コミサイトを開いて画面を操作する。




「これ」

「…………んー、？駅の向こう側かな」

「地図読んで」

「ほい」




あれ。このやり取り今日何回目かな？とか思いつつ。
ジュノンくんのスマホに映し出された店名を、自分のマップアプリに打ち込む。

ここから徒歩15分。途端にお腹がぐぅっと鳴る。




「はっ、わかったから」

「っ、おなかが限界って言ってるねん」

「はいはい。行くよ」




身体で主張する私に、ジュノンくんは呆れ顔だった。目的が果たされれば空腹を思い出すのだ、こればっかりは仕方ない。






＊





店員さんがアルミの蓋を開けると目の前で踊る肉汁。
楕円形の鉄板の上で音を立てるのは、250gの手捏ねハンバーグだ。その勢いに思わず目の前のジュノンくんを見やれば、彼はスマホを横にして動画を撮っていた。




(あ、私も撮ればよかった……)




そう思ってジッとジュノンくんを見続けていれば、私の視線に気付いたんだろうか。スッとカメラが私の方を向く。
咄嗟に両頬に手を当てて大きく口を開けた。“美味しそ〜う”の意思表示。




「ふっ」




ジュノンくんの鼻が鳴る。
動画は一瞬で終わるかと思っていたのに、一向に停止ボタンが押されない。数秒笑顔でいたけど、そのあまりの間に「いつまで撮ってるん！」と思わず聞いてしまった。




「嬉しそうだな」

「美味しそう。はよ食べよっ」




ナイフとフォークを取ってジュノンくんに渡す。私の分も手に握って、2人して「いただきますっ」と声を出した。





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